寝る子を起こすこと

明治時代に日清戦争が始まった時、日本は「眠れる獅子」の清を無理やり起こしてしまったとヨーロッパでは言われたらしい。もっとも英国はその前にアヘン戦争で清を骨抜きにしてしまっていたので当時の清の力がどれくらいだったのかはわからない。日本では古くから「触らぬ神に祟りなし」と言われ、余計なちょっかいを出さなければ災いは起こらないと思われてきた。じっとして静かにしている者は身も心も平安を保っていることが多いので、そのままそっとしておけば問題を起こさず大過なく過ごすことができると考える傾向にある。

そんな時にわざと波風を立てて寝ている人を起こすと大抵は不機嫌になる。せっかく安穏として気持ちいい状態を壊されて他人に無理やり遮られるからだ。気持ちよく居眠りしているところを邪魔されれば誰だって文句の一つも言いたくなる。しかし狸寝入りを決め込んでいる不届き者は時には叩き起こす必要もある。

先日来、厚生労働省で企業統計調査の不正が発覚した。もっともこのテの不正は今でもあちこちで行われているに違いなく今回も氷山の一角なのだろうと思う。官僚をはじめとする役人は仕事に就いてから退職するまでの間、 例外なく ”大過なく”過ごすことを目標にしている。 自分から積極的に立ち上がって 社会の歪みを世直しをしてやろうなどと思っている役人はいない。動くときは他人から欺瞞や不正を指摘された時だけだ。ただそんな時には”寝る子を起こした”時のように不機嫌になる。「余計なことをしやがって」と思っている。

自分が気持ちよく寝ているときに無理やり起こされる役人は普段から欺瞞の塊である。やるべきことをやらずにサボって昼寝などしているから起こされるのだ。自業自得とは正にこのことだろう。以前にも同じ厚生労働省の外局だった社会保険庁で長年の年金記録の不備が指摘されて大問題となり政権が転覆するきっかけになったのはまだ記憶に新しい。年金問題は国民全員に関わる問題だが給与統計や雇用保険問題も国民の大多数に関係している問題だ。人は自分が”損をする”ことには異常に過敏になる。折しも4月には統一地方選挙が行われ、夏には参議院選挙も行われるこのタイミングでお役人や政治家にとっては”寝る子を起こす”ような事件が発覚してしまったわけだ。

ちょっとした火が乾燥しきった日本の世論に燃え移った時にどれほどの火事になってしまうのか今はまだ想像もできないが、今回もお役人の欺瞞と隠ぺい体質が招いた自業自得の結果と言わざるを得ない。今のところ政権は根拠のない自信を持っているようだが、今国会で世論がどのように反応するのかを興味深く見守っていきたい。

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