さらば資本主義

「アベノミクス」と自称するお手盛りの経済対策がある。その中には「三本の矢」があってそれは金融対策、財政対策、成長戦略なのだが、自分では「素晴らしい成果が出た」という割には国民のほとんどがその成果を実感できず生活も何ら改善していない。これはいわゆる経済の「プラシボー効果」で、効きもしない薬を飲ませて”症状が改善した”と国民に思い込ませようとしているのではないかと疑いたくなる。「出た出た詐欺」だ。

フランスのマクロン政権がやっている経済対策もまったく効果が出ていないらしい。しまいには「燃料税」の大幅増税を持ち出してフランス国民から総スカンを食らっている。どちらのケースでも「企業投資が増える」→「設備投資が増える」→「生産が増える」→「景気が良くなる」ということを基本とした対策だが、いくら待っても景気が良くなっている実感がない。それはそうだ。一般国民にとって景気が良くなることはイコール「給料が上がる」ことだが、直近の10年間を見ても賃金上昇率は0.1%未満である。それに加えて「デフレ対策」として消費者物価を上昇させようとしているので実質賃金は下がっている。政府や日銀はこれを景気回復と言っているのだから詐欺と言われても仕方ない。

投資家が企業に投資しても経営者は設備投資しない。経営者が設備投資をすることでビジネスが大きくなり投資した分が大きくなって投資家の元に戻ってくるとともに、企業で働く人にも富がもたらされるというのが資本主義の理念だ。しかし政府の目論見は見事に外れて設備投資が多少増えても賃金はまったく増えない。賃金が増えないのだから消費が増えるわけがない。消費が増えないからお金が回らず景気が良くならない。企業が富を再配分せず貯めこみ続けているからである。結局、投資された分は内部留保されて企業ばかりが水膨れになる。

バブル時に4万円近くにまで膨れ上がった株価はリーマンショックで7000円台にまで落ち込んだ。その後2015年には2万円台を回復し2018年には2万5千円近くまで上がった。しかし企業の設備投資は一向に増えず賃金も上げなかった。給与水準も物価上昇を除いた実質ではマイナスのままだ。もはや資本主義の原理は働かなくなってしまったのではないだろうか。

北欧諸国では高額な税金と引き換えに多くの社会保障が無償化されている。これは社会保障に関しては一つの富の再配分であり部分的には社会主義の実現ともいえる。賃金の一部を税金として回収し、それを社会保障として国民に配分するのだからまさに社会主義のやり方だ。

第二次大戦後、社会主義と資本主義は常に敵対関係にあった。日本でも社会主義者や共産主義者は「アカ」と呼ばれて投獄されたりした過去があった。西側諸国では資本主義が「正義」で社会主義や共産主義は「悪」とされた。日本はその後、高度経済成長を果たして今の日本の礎を築くことになる。国がまだ貧しかった頃、大きな経済成長が望めた時代には資本主義は万能であるかのように思われた。

しかし時代が変わるにつれて「儲かったお金はみんなで分けましょう」というモラリズムはもはやなくなってしまった。誰もが「自分さえよければいい」と考え、富が偏ってしまった。先進国と言われる国や独裁政権の国が抱える共通の課題だ。富が再配分されないからだ。かつて共産主義を標榜したソ連や中国も遅れて資本主義に移行したが、今では同じように貧富の格差、富の一極集中が問題になっている。

資本主義にせよ自由主義にせよ、何かが絶対的に優れているということはない。いい面もあればよくない面もある。時代環境や人の精神環境によって適したものは変わる。資本主義も社会主義もそれだけで万能なわけではないということを、どうやら歴史が証明し始めているのではないだろうか?

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