不眠症

子供の頃から寝つきの悪いのが悩みだった。小学生の頃から、最低でも布団に入ってから1時間は寝られなかった。時には3~4時間も寝られないこともあった。なぜ寝られないのかわからない。猛烈に眠い時にでも布団に入ると目が覚めてしまうこともある。そんな時は決まって何かを考えている。それはほとんどの場合、差し迫った重大な問題ではない。「明日の給食は何だろう?」だったり「体育の授業はソフトボールの試合かなぁ?」だったり様々だ。そんなどうでもいいことが頭に浮かんでくると目が冴えてきてしまうのだ。

睡眠に必要なのは副交感神経である。昼間、起きているときに働いている交感神経が夜になって副交感神経に切り替わると眠くなるのだという。考え事をしていると脳の働きが活発になって交感神経を刺激して寝られなくなる。副交感神経に切り替わらなくなる。だから考え事をやめればすぐに寝られるはずなのだ。事実、いい感じに何も考えない状態が作り出せたときには10分もしないうちに眠りにつくことができるということまでは自分でも分かった。

問題はどうしたらそんなに都合よく考え事をやめられるかだ。そもそも何かを「考えよう」と思って考えているわけではない。勝手にいろいろなことが頭に浮かんできてしまうだけだ。試しに頭に浮かんだことに気付かないふりをしてみた。そのことについて何かを発展的に考えることなく「どうでもいいや」という気持ちになって無視するのだ。10回に1回くらいはこの方法が効果を表すこともあるがあまり確実ではない。

昔から言われている古典的な方法に「羊を数える」というのもある。そうすると「どうして羊なんだろう?」とか「羊って元はどこで暮らしていた動物なんだろう?」とか「ラム肉は臭くないのにどうしてマトンになると臭いが出るんだろう?」とか「羊は乳歯が抜けて永久歯に生え変わる頃からマトンって呼ばれるんだよな」とか「そもそもマトンの嫌な臭いって嗅いだことないけど、どんな臭いなんだろう?」とか「そういえば本物のトリュフの匂いもよく嗅いだことないんだよな」などととりとめのない連想の無限ループに入ってしまうのだ。

きっと明日のことも未来のことも過去のことも忘れて、お気楽でノホホンとした気持ちになればいいのだ。そして何も考えないようにすればいいのだ。だが、何も考えていない時には何を考えればいいのだろう?人間、そう簡単に何も考えない状態にはなれない。そこで思い浮かんだのが「瞑想」だ。聞いた話では瞑想状態になると頭の中は空っぽになるのだという。いや逆だ、頭の中を空っぽにすると瞑想状態になるらしい。それだとまず最初に頭の中を空っぽにしなければならない。それが出来なければ瞑想もへったくれもない。それができないから悩んでいたんじゃなかったのか?そんなことを考えていると精神が迷走状態になってくる。とどまることを知らず延々と迷走を続ける。気が付くと布団に入ってから3~4時間も経っている。ひと頃はそんな状態が続いていたので毎日の睡眠時間も2~3時間だったこともある。

自分のマインドコントロールに失敗して今でもなかなか寝付けない時がある。特に精神が疲れていたり眠かったりする時だ。寝ようと思って布団に入る前にそれまで考えていたことのスイッチをうまく切れれば10分ほどで眠れるのに、いまだにその確かな方法は分からないでいる。

せめて人生最後の眠りにつくときにはどうでもいいことをグズグズと考えて、なかなか寝られない状態にだけはならないように願うばかりだ。

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