心に刺さる、つかむ、
心に残るキャッチコピーの創作術(1)

■ 「ひねりのないネーミングだなぁ」
出来上がったタイトルやキャッチコピーを、あとから見れば「あぁアレをモジッただけだね」とか「2つをくっ付けただけだね」という風に見えることがあります。たとえば今、NHKでやっているドラマのタイトル「アシガール」。平成の女子高生がタイムスリップして戦国時代の足軽になっちゃう話なんですが、「女子高生=ガール」が「足軽」になっちゃうから「アシガール」。何とも単純でストレートなネーミングです。誰でも考えつきそうですね(笑)
他にも、JR東日本のトレイン&レンタカーの相性になっている「トレン太くん」。ただ2つをくっつけただけに見えますね(笑) それでももう10年以上も使われている愛称です。
こういったタイトルやネーミング、キャッチコピーはちょっと外に出ればいたるところで見られますしテレビや雑誌、電車の吊り広告でもお馴染みです。でもこれらは本当に誰でも簡単に作れるのでしょうか?

■ 普通のことを普通に言ってみる
確かに、まったくもってひねりのないタイトルやネーミング、キャッチコピーもたくさんあります。例えば会社などで作っている企画書の表題。「IT技術を使った新営業戦略のご提案」なんていうのをとてもたくさん見かけます。この企画書の表紙を見て「おっ、凄そうだな」と思う人がいるでしょうか? 「あーあ、これから退屈なプレゼンテーションを聞かされるんだろうな」と思われるのが関の山です。誰もワクワクしないんですね。その先の話を聞いてみたい、とは思わないわけです。
何が違うのでしょうか? それはワクワクさせる仕掛けがないからなんです。

■ アタリマエのことを心に刺さるように変える
これが「営業しない営業!力ずくの営業ではもう売れない」などと変えてみたらどうでしょう? えっ?営業しないのにどうして営業なの?とか「確かに自分は毎日精一杯頑張ってるのに結果が出ないのはどうしてだろう?」と思っている人にはちょっと引っかかるタイトルです。種をあかせばこれは”逆説”を示して、パッと見ると常識と反対のことを言っているようでいて、よく考えるとそこには真実が隠れているのかも?と思わせて気を引くテクニックです。「取り柄がないのが取り柄です」とか「意味がないことに意味がある」などあちこちで使われています。もちろん気を引けば読み手の期待は高まりますから「フタを開けてみれば中身がなかった」というようではそれこそ逆効果です(笑) こういった技法は「急がば回れ」「損して得取れ(エビでタイを釣る)」「負けるが勝ち」など古くからのことわざの中にもたくさんあります。
もうひとつは前にも出てきた「トレン太くん」です。トレインとレンタカーをただくっ付けただけに見えますが、これの秘密は「くん」です。擬人化して単なるパッケージ商品にキャラクター付けをしているわけです。そのことでお客様はこの商品に親近感を覚えて「何かいいことをしてくれるのではないか」と感じるわけです。

■ マジックワード(魔法の言葉)を使ってみる
極めつけはマジックワード(魔法の言葉)を使う方法です。それは何かというと「人生が変わる~」「運命を変える~」という言葉です。なぜこれがマジックワードなのかというと、人は何か良くないことに見舞われると何かのせいにしたがるのです。「自分がこんなについてないのは〇〇が悪いからだ」「自分だけがこんな目に合うのは△△のせいにちがいない」などなど。自分は元々運の悪い星の下に生まれついたんだと思いたいわけです。「だから何をやってもうまくいくわけがない」と。そんな人生が変わるのなら、よしんば他の誰かが変えてくれるのなら、といつも期待しているわけです。
ですから「人生を変える(が変わる)誰もやらない投資の極意」などと言われると興味を引かれるのです。
また、ほとんどの人は苦しい思いをしたり面倒くさいことをするのが好きではありません。とりすもご多分に漏れません(笑) だから「食事制限も必要ありません」「毎日の運動も必要ありません」、やるのは「貼るだけダイエット!」なんて言われるとすぐに心が動きます(笑) 人はみな単純化された行動が大好きです。そういった人間の心理に訴えかける言葉がすなわち「マジックワード」なのです。

■ 有名なものをモジッてみる
そしてもうひとつよく使われるテクニックとしては「寄らば大樹…」。というわけで、元々よく知られている有名なものをモジッちゃうというちょっと姑息な(笑)やりかたもあります。「宅配はネコである(ヤマト急便)」なんてクスッと笑えるコピーですね。もちろん原作は「吾輩は猫である(夏目漱石)」です。「吾輩(わがはい)」と「宅配(たくはい)」が韻を踏んでいるのもいいですし、ヤマト急便のマスコットキャラクターが黒猫であるところもピンときてます。(原作の「吾輩は猫である」の主人公も黒猫でしたね)
でもこれは簡単そうに見えて、これは結構ハイレベルな技です。何と言っても元ネタを膨大に知っていなくてはなりませんし、その元ネタがコピーの中で生きてくるシチュエーションでなければなりません。何をいいたいのかさっぱりわからないただの言葉遊びにならないように注意が必要です。

■ 読み手の意表をついてみる
「諸君。学校を出たら、勉強しよう(宝島社)」。これも逆説の一種でしょう。本来の”学校は勉強するところ”という常識に真っ向から対抗した作品です。現代の多くの大学生が勉強しないという事実を皮肉っている面もあり、真理を突いていますね。「このろくでもない、すばらしき世界(サントリー)」はちょっとストレートでした。CFの映像で社会の矛盾やほとんどあきらめている社会の格差などを皮肉りながら”それでもここで生きていかなければならない自分”に対するエールを送っているようにも見えます。「冷たい水の中を震えながら登っていく」(中島みゆきさん「ファイト!」より)自分への応援歌なのかも知れません。受け手はそれを感じて「自分を分かってくれる、見ていてくれる人がいるんだ」というメッセージを受け取っているのかもしれませんね。

こういったコピーの手法は非常に多くあって、なおかつ日々どんどん増えています。普段から見慣れてしまったものも違う視点から眺めてみることで、読み手に何かを感じてもらうことができるはずです。次回もこの続きをお話しようと思います。