人間が進化することと学習すること

しばらく前から生物の進化についてちょっとしたヒントをもらって考えることが多くなった。以前ここにも書いたが、「進化」というとダーウィンの進化論があまりにも有名で一般社会では「適者生存」だけが金科玉条のように唱えられている。それはビジネスの世界でも「変化する環境に対応できない会社は淘汰される」などと言いかえられて使われたりしている。しかし実際の「自然界での進化」ということに限ってみてみると、その時の環境では適者だった生き物(種)が環境の激変によって絶滅してしまった例も少なくない、というよりも絶滅という事態に関しては環境の激変が大きな要因と考えられており、自らの体を環境に合わせて進化させる間もなく絶滅してしまったと考えるのが妥当だと考えられている。そして地球上に生命が誕生してから今に至る間に、恐竜などで知られているように、この世に存在したことのある種の99.9%はこのような要因によって絶滅しているのだ。

生物の進化は人間の寿命と比べると比較的ゆっくりと進んでいく。数十年の間に魚が鳥になったり鳥が爬虫類に進化することはない。過去の歴史をひもといてみても数十年の間に地球全体の環境が激変してしまったということはさほど多くない。地球表面の気温に変化にしても間氷期から氷河期に移行するには数万年の時間をかけてゆっくりと変化している。その間に生き物も環境に対応するようにゆっくりと変化していく。しかし寿命が比較的長いと言われるヒトでさえ1世代はせいぜい100年だ。現代の人間の生産活動に伴う地球環境の変化を除けば、その間の環境変化はほとんど0に等しいと言っても間違ではないと思う。つまり生物の「進化」というものは環境がほとんど変化しないような環境のときには役に立つが、環境が激変してしまうようなときには対応することが非常に難しいと考えられるわけだ。

では環境が大きく変わってしまう時、絶滅した生物と生きのびた生物の違いは何だったのだろう。一つには激変後の環境がある生物にとって適した環境だったということが考えられる。かつて地球に衝突した隕石の影響で恐竜は滅んだといわれている。その時に今のヒトの遠い祖先に当たる小さな哺乳類にとってはその後の氷河期を乗り越えるために、大量の食料を必要としない小さな体と恒温動物という特性が幸いしたと考えられている。たまたま自分の体が環境の変化に対応できていただけということだ。

以前に上野の国立科学博物館で「人類の進化」展という特別展をやっていた。そこではかつてアフリカ大陸に発生したヒトの祖先が今のヨーロッパ大陸に移り住んでネアンデルタール人になり、その後さらに新しく発生したホモ・サピエンスが中東あたりを経てアジアに進出するといったストーリーが展示されていた。その中でネアンデルタール人がやがて絶滅し、ホモ・サピエンスが生きのびて繁栄した大きな要因には統制の取れた集団行動(協力して目的を果たすこと)や高度な道具の発明や使用があったとしている。体毛が薄く寒さに弱いヒトが針と糸を発明したことで服を作り、寒い地域に進出できたことなどが語られていた。

産業革命以降、人類は化石燃料を燃やしたりプラスチックを発明したりして地球全体の環境に大きな影響を与えるようになった。オゾンホールの拡大や地球温暖化による極地の氷の減少、異常気象による災害の増加や農作物・海洋資源、生命環境への影響、マイクロプラスチックの問題などは一部の国や民族だけの問題ではなく人類すべての、いや地球上に生きるすべての生き物の問題になっている。

人間は石炭を燃やして脚で走るより高速で移動できるようになり、ガスを灯して夜も明るく過ごせるようになり、建設機械やロボットの発明で大きく重いものも簡単に動かせるようになった。今ではコンピュータによって人間の能力を大きく超える叡智を築いている。その200年ほどの間に地球環境はほとんど変わらなかった、いや変わらないはずだった。人間自身はほとんど進化しなくても生きのびていけるはずだった。ところが便利さや快適さを求めた人間は様々な道具を発明して使い始めた。そのことで地球環境すら変えてしまった。

環境の激変に「進化」は対応できないと書いた。しかしヒトは「学習」することで自らの習性を変化させて、大きな環境の変化に対応することができる。学習することによって大きく異なった習性を持つ個体として生きることが可能になるのだ。人間は今、生物としての進化の道を捨て、学習によって生き延びようとしている。しかし人間のように新しいことを「学習」することのない他の生き物は現代の環境の激変に対応する手立てを持たない。人間は地球上に暮らす果てしない種類の同胞たる生き物たちを見捨てて、自分たちだけが生き残ることだけを考えるようになってしまったのだろうか。

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