俺たちに老後はない

今、政府で年金の受け取りを遅らせた人に月額の支給額を増やす仕組みが検討されている。現在は基本的に65歳からの支給だが、それを70歳からにした人には月々の支給額を増やしますよという制度である。もちろん受け取りを遅らせるのは個人の自由だが「もらえる額が増えます」と言われればきっと一定数の人は応募するのだろう。

話は変わるが、携帯電話料金に皆さんは月々いくら払っているだろうか。ボクはかつてドコモやau、ソフトバンクなどの大手キャリアと契約していた頃には7,000~8,000円ほどを毎月払っていた。ボクはほとんど通話をしないしネット回線は家にいる時には家のWifiを使えるので「つなぎたい放題プラン」も必要なかったので余分な通信通話料もほとんどかかっていなかった。しかし大手キャリアが宣伝していた「本体0円プラン」がお得だと思いこんでいたので契約を継続していた。しかしある時、偶然に格安SIMの料金プランを見たときにその価格に驚愕した。ネット回線だけなら月額500円程度、通話ができるプランでも1,500円だ。もちろん「かけホーダイ」も「つなぎホーダイ」もなかったが普段はほとんど通話をしないボクにとっては願ったり叶ったりである。

問題は本体料金だ。iPhoneを使っているボクにとっては今更使い勝手の違うAndroid端末に変えるのはハードルが高い。しかしAppleストアでSIMフリーの端末を買えば8万円前後かかる。でも月額料金が5,000円も安くなれば年間で6万円も浮く計算だ。ということで試算(といっても簡単な足し算の比較だが)したところ端末を割引なしで買ったとしても1年半で支払額が逆転することがわかった。たまたま大手キャリアの契約更新月だったので翌日には解約してAppleストアでSIMフリー端末を新たに買い格安SIMキャリアと契約した。以来3年間、ボクが支払った携帯料金は従来の契約と比べると10万円程度削減できた。しかもそれは今後も続きその差は開くばかりである。毎月の支払額を見てみるだけでもいろいろなことが見えてくる。

日本の社会保障(特に年金制度)は既に崩壊することが目に見えている。だから政府は年金の支払額を少しでも抑えなければならない。逆に言えばそれは我々の受取額が減るということだ。支給額を減らすには毎月の支給額を減らすか支給年齢を上げて受け取れる期間を短くする方法がある。しかしあからさまに「支給額を減らします」と言えば猛反発が起こって政治家は選挙で大敗するだろう。だから減らされることがわからないように工夫をするのである。

「支給年齢を上げる代わりに支給額を増やします」と聞かされれば「お得なんじゃない?」と思う人もいるだろう。しかし我々が得をする、つまり年金をたくさんもらえるようにすることは政府の支出が増えることになる。そんなことを政府がやるわけがないのだ。すでに財政破綻しそうな日本政府の基本は「国民に払う額を減らす」ことなのだから。

もらえる年金の月額支給が増えても人の寿命はそれによって変わるわけではない。死ぬ時期は一緒だ。死んだら年金はもらえなくなる。つまり年金をもらえる期間が減るだけだ。65歳から70歳に受給年齢を遅らせたときにその5年間にもらえるはずの年金額は月額10万円の人なら10万円×12ヶ月×5年=600万円である。一方で70歳からの受給にしたときに70歳から死ぬまでの間の受給額の差は月額5万円加算されたとしても5万円×12ヶ月=60万円(年額)になる。日本人の平均寿命が83歳としても13年間にもらえる年金額の差は60万円×13年=780万円だ。月額5万円がその時にどれほどの価値を持っているのかはわからない。そしてすべての人が平均寿命を全うできるわけではない。だから個人が受け取れる額が増えるか減るかはほぼ五分五分の賭けになる。政府としてはこの先支給額が多少増えるリスクをとっても年金問題を先延ばしすることができればとりあえずは問題解決なのだ。役人たちは、未来のことは未来の人間(つまり私たちの孫や子)が解決する問題だと考えている。

人生100年、1億総活躍社会などと聞かされると年金の受給年齢を5年遅らせただけでものすごく得をするように聞こえる。しかしマーケティングの視点から見れば「大してお得ではない」のだ。ましてや受給年令になる前に死んでしまえば”丸損”である。そしてもっと大きな問題は誰もが”死ぬまで働き続けなければ生きていけない”ということだ。それは病気になろうが体が動かなくなろうが関係ない。町に出れば足腰が弱った高齢者が杖を突きながらトボトボと歩いている姿をよく見かける。これからの時代は我々の体がそうなったときにも働かせ続けることを前提にしている。

我々にとって楽隠居などという言葉はもはや死語なのだ。
誰もがその覚悟だけはしておかなければならない。

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