その次に起こることに思いを至らすこと

今年の日本には猛烈な台風が次々とやってきては甚大な被害を出した。各地で大規模な停電が何日も続いたという。現代の生活では電気はもっとも重要なエネルギーでライフラインの要ともいえる。かつての昭和の時代ならガスはガス、電気は電気、水道は水道、電話は電話で完全に分かれていて停電したからといってガスが使えなかったり電話が使えなくなることはなかった。今の多くの家ではそれらが複雑に関係していてひとたび停電するとすべてのライフラインがストップしてしまう。

その上電気はナイーブな側面があり基本的に家庭では在庫しておくことができない。水やカセットコンロのガスならば前もって備蓄しておくこともできるが電気だけは乾電池やバッテリーに保存しておいてラジオやスマホの使用だけに限っていても1~2日で底をつく。冷蔵庫を動かし続けるなど論外だ。

台風や地震で起きる停電の原因の多くは電線が切れたり電柱が倒れたりすることによる。先日、千葉県の私鉄・京成線で塩害によるとみられる大規模な電車の運休がありほぼ丸一日の間電車が動かないという事態も発生した。台風による強風で海の水が飛沫となって飛んできて電線に付着して漏電の原因になったとみられている。また台風が通り過ぎたあとには切れて道路に垂れ下がった電線も多く見られる。それでも電力会社は切れた電線を張り直して修理してまた近いうちにやってくる台風で被害を受けるというイタチごっこを繰り返している。

今の日本で停電による社会の経済的損害は計り知れない。公共交通機関や企業・店舗などの損害が計算されることはあるが家庭の冷蔵庫にある食材の廃棄分などが計算されることはない。それは一般家庭が停電による損害を電力会社に請求できる契約になっていないからである。

企業などでは不意の停電によって被った被害については損害賠償を請求できることがある。ボクも以前に勤めていた会社で日中に突然停電が起き、絶賛稼働中のホストコンピュータが「ピューン」という音とともに電源が落ちたことがあった。コンピュータ室にいた人間には何が起こったのか瞬時にはわからなかった。データの復旧には4人がかりで1週間もかかった上にその間、受注や出荷のデータも処理できずに莫大な額の損害を東京電力に請求したことがあった。

最近ではそんな事態が起きることはめったにないし大地震が日常茶飯事起きることもない。しかし日本には毎年確実に台風がやってくる。例年、関東地方ではあまり停電することはないが今年は大規模に数日間にわたって停電した地域も多く被害も拡大した。ただ沖縄・九州地方では台風が強い勢力で接近して上陸することが多くライフラインへの被害も毎年のように繰り返されている。それなのに電力会社は抜本的な対策を取ることをせず日本に電力が供給されてからずっと電線と電信柱に頼ってきた。

もういい加減に電柱を立てて電線を張るのをやめ、地下に埋設する方向に舵を切ればいいと思うが政府や自治体・電力会社には全くその気がないらしい。「予算がない」ことを理由にしているが停電による社会的な損害はそんなものでは済まされない。電車が動かず仕事にも行けず交通信号が消えて都市部で物流が大混乱したときの経済的な損失は誰が補填していると思っているのだろう。地下に電線を埋めることは電柱を立てて電線を張ることに比べれば多少はお金がかかることだが大規模に長期間停電して経済活動で損失を出すことと比較して考えてもらいたいものだ。これから増えるといわれているスーパー台風や首都直下地震、南海トラフ地震など災害に対する備えを政府や行政・電力会社が真面目に考えているとはとても思えない。

テレビニュースの街角インタビューに「停電して断水するとは考えなかった」という男性が出ていた。山の上の住宅地やちょっとしたマンションなどでは水道水をポンプで高いところまで持ち上げている。浄水場の送水ポンプでは高い土地に水を持ち上げる圧力をかけられないからだ。そしてそのポンプは当然電動で動いている。停電すればどうなるかはちょっと考えれば分かることだ。

ボクの実家は高台にあった。ボクが小学2年生のとき家の近所が予告なく突然停電になった。昔はよくあったことだ。昼間で友達の家に遊びに行こうと外を歩いていたボクは近所の家の人達が「停電だ」と騒いでいる声で停電を知った。ボクの住んでいた高台の住宅地には住宅街よりもちょっと高い場所に大きな給水タンクがあった。大きなタンクだったので住宅地に住んでいる人は誰でも見て知っていた。
ボクは停電になったと聞いたときに「あの大きなタンクの水を使い切ったら住宅地は断水する」と直感してすぐに家に帰って浴槽に水を張りありったけのヤカンや鍋に水を張り隣の家のオバちゃんにもアドバイスした。

案の定1時間ほどして水道の水圧は段々と弱くなりやがて住宅地は全面的に断水になった。停電と断水は翌日まで続いた。我が家は鍋やヤカン、魔法瓶に貯めた水で飲水や料理もできたし浴槽に張った水で水洗トイレも使えたしお風呂にも入れた(当時のガス風呂は停電しても普通に使えた)。そんなことはちょっと考えれば小学2年生でも分かることだったし友人の家でも対策したところは結構あった。

でも今の大人は頭を使って考えることをしなさすぎる。問題意識がなさすぎる。今、何か起きたら次に起きることくらいはだいたい想像できるはずだ。せめて身の安全とライフラインのことくらいには気を回したほうがいいと思う。困るのは他でもない自分自身なのだから。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください