島国根性

今年の全米オープンテニスで大坂なおみさんが優勝したことは日本でも大きく報道されたのでご存知の方は多いだろう。全米オープンはテニスの世界四大大会(グランドスラム)の一つで毎年8月から9月にかけて米国で行われる歴史ある大会だ。その大会で男女を通じて日本人で初めて優勝したのだからそれは素晴らしい快挙である。

ゴルフや体操、水泳、柔道、レスリングなど日本人選手が世界で活躍するスポーツは多い。それらのスポーツを「お家芸」などと言うこともあり有名な選手を数多く輩出している。しかしテニスの世界での絶対王者といえばわずかに車いすテニスの国枝慎吾(くにえだしんご)選手をみるくらいで、過去には松岡修造さんや伊達公子さん、杉山愛さん、沢松和子さん、現役では錦織圭選手などが世界で活躍しているが世界的にみて選手層が厚いというほどではない。

ところで日本人が苦手な競技での活躍といえば、2008年北京オリンピックの男子400mリレーで日本人選手が陸上トラック競技で史上初めてのメダルを獲得した。 塚原直貴、末続慎吾、高平慎士、朝原宣治の4選手によるものだった。失礼な話だがボクは日本人が陸上のトラック競技でメダルを獲る日が来るとは思ったことがなかった。他の国、特に黒人選手などと比べて日本人は平均して体格が小さくてハンディがあり勝てそうな気がしていなかった。陸上では過去にハンマー投げの室伏広治さんやマラソンの高橋尚子さん、野口みずきさん、有森裕子さんなどが世界と互角に戦って活躍してきたが、ことトラック競技となると日本人の顔が見えてこなかったのだ。まったくもって失礼な話である。

ところが北京オリンピックではいきなり銅メダル(あとで2位の選手が失格になったために結果は銀メダル)を獲得した。これまた本当に失礼だが、ボクにはもう二度と起こらない奇跡に思えた。しかし奇跡はまた起こった。 2016年のリオデジャネイロオリンピックで山縣亮太、飯塚翔太, 桐生祥秀、ケンブリッジ飛鳥の4人が再び銀メダルの快挙をみせたのだ。だがこのときの正直な気持ちを言えば「やっぱり日本人だけの血では勝てないのかなぁ」ということだった。ケンブリッジ飛鳥選手はジャマイカ人の父親と日本人の母親を持つ。もちろん日本の選手で日本に住んでいる。アタリマエのことだが日本語だって普通の日本人と同じだ。しかしその名前と肌の色で”モンゴリアン”ではない血が入っていることは一目瞭然だ。

日本人は明治維新以降に日本にやってきた異国人を「ガイジン」と呼んできた。出身の国によって言葉や目や肌・髪の色は様々で体格も違っていた。今でも海外旅行などでオランダの航空会社を使うと男女にかかわらず客室乗務員の体格の大きさには驚かされる。女性であってもジャンボジェットの天井に手が届きそうなくらいなのだ。日常でそんな光景を目にしていると持って生まれた体格はスポーツをする上では圧倒的なアドバンテージに感じる。

ボクがもうひとり注目していた選手に サニブラウン・アブデル・ハキーム選手がいる。残念ながらオリンピックの舞台で活躍することはできなかったが世界陸上では大活躍した福岡県出身の日本選手である。ハキーム選手もガーナ人の父親と日本人の母親を持っている。父親は若い頃サッカー選手として活躍していたらしい。彼の容姿も黄色く平坦な顔立ちの平均的な日本人とは違っている。もっとも今の日本では名前だけでその生い立ちの違いをうかがい知ることができる。

話は戻るがそこへきて「大坂なおみ」さんである。彼女も一昨年くらいからあちこちの大会に出場していたが優勝できるほどの成績を収められていなかったのが現実である。ところが昨年末から今年にかけての半年間で急激に実力をつけて勝ち上がってきた。テレビで彼女のインタビューなどをご覧になった方はおわかりと思うが彼女は日本語があまり得意ではない。ハイチ人の父親と日本人の母親の間に生まれたが現在は家族ともアメリカに住んでいるのだから当然だ。インタビューでは片言の日本語でも受け答えをするのでそれも彼女の人気の一つになっている。

そんな彼女が先日、日本で行われた東レ・パンパシフィックオープンに出場するために来日した。マスコミでは盛んに「大坂なおみ選手が帰国」と言っていたがとても違和感があった。アメリカに住んでいる彼女は”日本に帰国する”わけではない。あくまでも「来日」だと思うのだ。

同じような違和感は数年前にノーベル文学賞を受賞した日系イギリス人小説家のカズオ・ノグチさんのときにも感じた。ノグチさんは日本人の父親と母親を持つが今はイギリス人である。このときもマスコミは「日本人作家」と盛んに言っていたが「イギリス人作家」の間違いだ。日本出身だというだけで日本人にされてしまった。

日本人、特に日本のマスコミは本人と日本との間に何らかのつながりを見つけると「日本人の~」という前置きをつけたがる。日系ブラジル人だって日系ハワイ人だって日本人ではない。その点、中国人は中国系カナダ人や中国系オーストラリア人を中国人だとは思っていない。それは中華民族の海外への進出の歴史や定着後の現地への溶け込み方が違うからだと感じている。いや日本から異国の地に出ていった人たちだってその地に根を張りその国の人になっている。

日本に残った”ニッポン人”だけが海外で活躍している”元日本出身者”を羨んで「私たちは仲間だよ」と言っているように見える。これもいわゆるひとつの「島国根性」なのだろうか。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください