嵐の中心でEyeを叫ぶ

今年の8月は例年と比べて台風が多かった。その上、いつもと異なるコースを描いて日本列島に接近するものが多かったので各地で大きな被害も報告されている。

台風は日本の遙か南方海上で高い海水温によって引き起こされた上昇気流が水蒸気を上空へ運んで雲を作り、上昇していった地表の暖かい空気を補うように周囲の空気を吸い寄せる。それは地球の自転によるコリオリ力(りょく)で次第に渦を巻くようになる。地表付近では上昇気流によって空気が薄くなり低気圧になる。日本の気象庁ではこれを「熱帯低気圧」といい中心付近の最大風速が18m/s以上になったものを「台風」と呼んでいる。

台風は地表付近では反時計回りに渦を描くように風が吹き、中心には”目”と呼ばれる雲のない部分があって風も雨も弱いことが多い。もちろん目を外れれば猛烈な暴風雨が吹き荒れている。

台風が遙か南方海上にあるときには温かい海水によって上昇気流が発生し上空に水蒸気が供給されるために急速に発達する。しかし赤道付近に吹く貿易風から外れた北側ではこれまた地球の自転によるコリオリ力が働き台風には北上する力が働く。北上によって更に緯度が高くなると今度は西寄りの偏西風の影響を受けて南西から日本列島に近づくというのが一般的に多い台風のコースである。

衛星写真の画像で見ると発達中の台風にはかなりはっきりとした”目”がある。小笠原や沖縄に接近する台風にも明確な”目”があることが多く、台風の勢力が強いことを示している。ところが九州や四国、本州に接近する頃には真円に近かった台風の雲は徐々に崩れ始めてグズグズになることが多い。もちろんだからといって急に暴風雨がやむわけではないので安心してはいられない。

しかしなぜ陸地に近づいた台風は形を崩して弱まることが多いのだろう。

台風が生まれて発達するのは主に海の上である。そこには高い山もなく高層ビルもない。風は地表(海上)に遮られるものがないので地球のコリオリ力をそのまま受けて台風は発達する。もちろん上空に吹く風も同じ勢いで強くなってくる。

一方で陸地が近づくと地表付近の風は山や建築物などによって遮られて弱められる。しかし上空に吹く風は山などに遮られることがないために弱まることがない。海上では同期が取れていた上空と地表付近の風は陸地に近づくと次第に不均衡になり雲の形が崩れて中心が曖昧になっているように見えるわけだ。この上空と地表の風の強さの差が大きく影響する。

先日、大阪を始めとした近畿地方に大きな被害をもたらした台風21号はたまたま紀伊水道を通り大阪湾を抜けて海上からいきなり大阪・兵庫に上陸した。陸地の影響をほとんど受けずに大都市を直撃したといえる。もっともこれはたまたま大阪だったのであって台風が東京湾を通って東京をいきなり直撃する可能性だって十分にあったわけだ。

また気象速報などでは臨時ニュースで「台風が~付近に上陸したと見られる」と発表することがある。しかし実際には上空からの衛星写真では地表付近と上空での台風の”目”の位置がずれてしまっているのでビジュアルでは非常にわかりにくい。台風の雲は解けてしまったように見えるが地表と上空に分かれて広い範囲に豪雨と暴風をもたらすようになってしまったと考えることもできる。もはやこうなると中心付近だけが一番危ないとは全く言えなくなっている。

日本列島に接近する台風は”目”が上陸した場所だけが問題なのではなく、その周辺の強い風や雨が降る場所こそが問題なのである。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください