昭和レトロ

戦後の昭和20年から1980年頃までを巷では”昭和レトロ”と呼ぶらしい。レトロはretrospectiveの略で懐古趣味や復古調のことをいう。なんだかんだ言っているうちに昭和はとっくの昔に終わり、平成も30年で終わろうとしている。ボクも昭和の中頃に生まれて25年、平成を30年間生きてきたのだから言ってみれば「昭和も遠くなりにけり」である。もはや昭和もレトロだ。ただ不思議なことに”昭和レトロ”は外国人観光客にも人気があるのだという。彼ら彼女らが昭和の日本に住んでいたわけではないから懐古趣味というよりは復古調の”古き良き日本”の雰囲気を味わってみたいだけなのだろうが…。

ラジカセ、ブラウン管、ウォークマン、レコード、フィルムカメラ、ビデオテープ、週刊誌、少年マンガ、駄菓子屋、お祭り、ディスコ、ハイソ、ツッパリ、校内暴力、暴走族、ファミコン、etc.
日本が終戦を迎え焼け野原になってから高度経済成長を経てそれなりに豊かになっていった時代だった。豊かになってはきたが現代と比べればそれなりにチープな時代でもあった。もっとも未来のことなど想像もできなかったから今のように一人ひとりが情報端末を持ってトランシーバーよろしく無線で会話をするのはウルトラマンの世界だけだった。子供はそこらに落ちている棒っ切れでチャンバラごっこをし親父のズボンのベルトを失敬してきては仮面ライダーごっこに興じた。もっともいくら頑張って変身ポーズをとったところでマジックで書いたベルトの風車は回るわけもなく、家に帰って親父にこっぴどく怒られるのが関の山だった。

とにかく「あるものしかない」のであって「無いものは無い」時代だった。もちろん金持ちの家の子は当時からラジコンなどを持っていたが大多数の平民の子供はミニカーを手に持って「ブゥーン!キキーッ!」と口で言っては畳の縁をサーキットに見立ててレースごっこをしていた。そう”ごっこ”が遊びの多くを占めていた。

ガイジンは日本のお祭りの縁日を昭和レトロだと感じるらしい。昭和の日本になんていなかったくせに(笑)
たぶん彼らがその当時の日本に来ていたとしても不潔なものを見るような目つきでたこ焼きやお好み焼き、綿菓子やりんご飴、べっこうあめを見ていたことだろう。いや確かに不潔だった(笑) 今の日本人がフィリピンやインドネシアの下町の屋台でうかつに買い食いすればお腹を壊すこともある。まだまだ公衆衛生も整っていない場所は多い。かつての日本もそうだった。街なかでもそこら中で立ちションする姿が見られた。
時代は変わった。よかれ悪しかれ日本の国際的な地位は向上した。

少なくとも今の20代の若者は昭和の時代を生きていない。話や過去の映像では見たことがあっても銀玉鉄砲で近所の空き地で撃ち合いをやったことも殆ど無いだろう。たぶんそれはボクが子供の頃の大正時代を想像して見ているようなものだろうと思う。

昭和になってからボクが生まれるまでの約40年間には日本を揺るがすような大きな出来事がたくさんあった。
226事件(クーデター)、太平洋戦争、終戦、進駐軍による占領…。
生まれた後の昭和20余年間になっても
新潟地震、東京オリンピック、小笠原返還、沖縄返還、札幌オリンピック、ロッキード事件、日航ジャンボ機墜落…。大きな事件や事故だけだっておびただしい数の出来事があった。

平成の時代には何が起きたのだろう。
地下鉄サリン事件、長野オリンピック、阪神淡路大震災、中越地震、東日本大震災(福島原発事故)、関東・東北豪雨災害、熊本地震、九州北部豪雨災害、西日本豪雨災害、…。
明らかに大規模な自然災害がたくさん起きている。いいことばかりではない。

昔を懐かしく想うことはその時代を生きていない人には郷愁だけが感じられるが、その時代を生きてきた人にはその時に起きた辛い思い出も一緒に蘇る。それには誰もが共有しない思い出もある。受験勉強、入学試験、就職、失恋、結婚、クラブ活動、友だちの顔…。そんなものがごちゃ混ぜになって自分のレトロが作られている。外から見ただけの「ALLWAYS」とはその重みが違っている。

今の時代から昭和に戻りたいとは思わない。
戦前戦後のように家にはかろうじてラジオが1台あるかないか、というように昭和レトロの家にもかろうじてブラウン管のテレビが1台あった。子供の頃はテレビも真空管でスイッチを入れてから5分ほども待たないと画面が映らなかった。
平成になってハイビジョンが普及した。大して変わらないだろうと思っていたが今、昔のテレビ番組は見るに堪えない。インターネットだって今さら電話回線には戻れない。スマホのない生活がどんなに不便に感じることか想像すらできない。

今の平成を生きる人も次の時代を生きる人にもそれぞれのマイ・レトロを育んでいって欲しい。ボクにとっての平成もいつかはマイ・レトロになる時が来るに違いない。

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