二倍!二倍!

「当社比3倍」という広告は毎日のように目にする。画期的な発明の結果「商品の性能が著しく向上しました」ということなのかも知れない。何が3倍になったのかとよく見ると「洗浄力3倍」だったりする、洗浄力って何だ?
2.18倍とか5.42倍などという一見具体的な数字を出して性能をアピールすると多くの人に信用されやすい傾向がある。心理学でも検証されている事実だ。それが何を意味する数字だかわからないとしても…。だから広告では一般の人が聞いたことがないような化学成分の名前や専門用語を持ち出して2倍だ3倍だと強調するわけだ。コラーゲンだってヒアルロン酸だってその化学式を知っている人はほとんどいないし、かくいうボクだって知らない。それが体内でどういう作用をするのかに至ってはほとんどの人がCMで言っていることを鵜呑みにしている。それでも誰もがコラーゲンと聞けば肌がプルプルツヤツヤになる若返りの薬だと思っている。

1回成功→2回成功で2倍になりました、というのと1000回成功→200回成功で2倍になりましたというのでは信頼度が違う。1回→2回で2倍というならもう1回増えて3回になっただけでも3倍ということになる。しかし
1000回→2000回なら3倍になるためにはあと1000回成功しなければ達成しない。1回成功すればいいのか1000回成功しなければいけないのかの間には1000倍の信用度の差がある。この場合だと単に倍率だけを見て比較するのではもはや数字の誤魔化しでしかない。
プロ野球選手がシーズン中に1打席だけ出てホームランを打てば打率10割で全打席がホームラン、というのと同じで意味がない。100打席出て10割打者になるには100打席のうち1打席も失敗なく全打席で安打を打たなければいけない。

ある議題について賛成・反対の投票を行った時に、2人の意見を聞いてそれぞれが賛成と反対の意見を持っていたら「賛否は半々です」ということになるだろうか?いやならない。分母が小さすぎてどちらとも言えない。もうひとり加わって3人になれば圧倒的賛成にも圧倒的反対にもなる。

分母(標本数)(n)の数はある程度大きくないとダメだ。それは次のような式で計算される。

n=(λ^2*p*q)/(d^2)

n:標本数
d:標本誤差(結果の当てはまる範囲)
λ:信頼水準によって決まる値
p:当該比率(賛成者の比率)
q:1-p(反対者の比率)

λ=1のとき、信頼水準が68.3%、2のとき、信頼水準が95.4%、3のとき、信頼水準が99.7%

例えば「賛成と反対が同じくらいです」という結論を95%の精度で導き出すには約1,100人に意見を聞かなければならない。それで賛成と反対が47%~53%に入る確率が95.4%になる。精度を99%にしたければ2,500人に意見を聞かなければならない。
そして精度がいいとしても結論には幅があるということだ。ニュースなどでは世論調査の結果などで「賛成52%反対48%で賛成が上回りました」などという報道をするが、上下2%の幅では誤差の範囲に入ることが多くこの場合も「賛否が同じくらい」と結論付けるほうが自然な場合が多い。

分母の質にも問題があることがある。先日、テレビの清涼飲料水のコマーシャルで「管理栄養士の95%が美味しいと答えました」と言っていた。思わず吹き出しそうになった。”管理栄養士の95%”に何の意味があるのだろうか。それはあくまで管理栄養士であって一流のコックではない。管理栄養士は味の専門家ではない。その人達が「美味しいです」と言ったことに何の意味があるのだろう。こんな誤魔化しが世の中には溢れている。

与えられた情報をただ鵜呑みにして、単に割合だけを見るのではなく全体の総数の中でどれくらいの割合を占めているのかという情報の中身を吟味しなければ数字を見誤ってしまう。世の中は「ウソとは言い切れない。しかしホントではない」情報だらけだ。

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