からあげ礼賛

ボクは日本唐揚協会の公認カラアゲニストである。ふざけていると思われるかもしれないがれっきとした一般社団法人である。入会にはホームページ上にある検定試験に合格する必要がある。ボクは5年前に”からあげ検定”に合格し晴れてカラアゲニストになった。
日本唐揚協会の理念は唐揚げを通じて世界平和を目指すことである。その理念の背景には「唐揚げはみんなが大好きだ」ということと「唐揚げを食べながら怒る人はいない」という会長の信念が色濃く投影されている。

ボクは唐揚げが大好きだ。ボクは主に家で唐揚げを揚げて食べている。もちろんお店で買って食べるのも外食で食べるのも好きだ。最近では唐揚協会の振興活動もあってか街中で「唐揚げ専門店」なるものを見かけることも多くなった。しかしボクの中では唐揚げは家で揚げて食べるものだった。子供の頃から肉屋の店先ではコロッケやメンチと並んで唐揚げも売られていたし買っていく人も大勢いた。
ボクも売っている唐揚げを食べてみたいという衝動に駆られたことは1度や2度ではなかったがその願いが叶うことはついになかった。

ボクは大人になって自分で稼げるようになったらどうしてもやってみたいことが2つあった。一つはサラミソーセージを1本丸ごと1人で食べること。もう一つが肉屋で唐揚げを買って食べることだった。サラリーマンになって初任給をもらったボクは「育ててくれた両親に感謝してプレゼントを買う」などということは全く考えずに早速サラミと唐揚げを買って家路を急いだ。

初めて買って食べた”冷めた”唐揚げは美味しくも不味くもなかった。それは長い間憧れていた女の子の部屋を訪れたら予想外に散らかったダラシがない性格だったことがわかって失望した瞬間にも似ていた。こんなものだったのかという思いが、いい意味でも悪い意味でもボクは大人の階段を一段登った。

その後数十年を経て唐揚げの聖地・大分県中津に出かける機会を得た。中津市は福沢諭吉の故郷としても有名だが今では唐揚げの聖地だ。ただし日本唐揚協会の統一見解としては「唐揚げ発祥の地」は大分県宇佐市とされ、日本で初めての唐揚げ専門店ができたのが彼の地である。お隣の中津市には現在では持ち帰りの唐揚げ屋が数十軒もあり一大唐揚げタウンとなっているため日本唐揚協会は中津市を「唐揚げの聖地」としている。

中津市を訪れた際には久しぶりにお店で買った唐揚げを食べてみたのだがこれが美味い。もちろん揚げたてを店先で食べるのだから学校帰りに肉屋で買い食いしたコロッケと一緒で不味いわけはないのだが、それ以上につけ込みダレのコクと奥深さに最近のプロの仕事を見た気がした。

それ以来、唐揚げ専門店の味から自分でレシピを考えたり協会推奨のマル秘レシピを試しては家で揚げて再現しているが、以前のウチ唐揚げとは一味違った味付けとバリエーションが我が家の唐揚げを進化させたことは紛れもない事実である。
是非とも皆さんにもこのクソ暑い夏だからこそキッチンで熱い揚げ鍋の前で辛抱・我慢して美味しい唐揚げを揚げていただき、ダクダクと汗をたっぷりかきながらハフハフと熱くて美味しい唐揚げを食べ、冷えたビールをキューッと楽しんでいただきたいものである。

余談だが、サラミを丸ごと1本食べたその夜は激しい胸焼けと下痢に苛まれて一晩中、アパートのトイレから出られなかったことを今でも鮮明に覚えている。「分不相応なことはするな」という神サマの啓示だったのだと、それからは「サラミは半分まで」という掟を作ってその後の人生を安泰に生きている。