ケツカッチン

先日は西日本で大規模で広範囲な豪雨災害が発生して200人以上の方が犠牲になりました。この場を借りて謹んでお悔やみと、被害に遭われた方にお見舞いを申し上げるとともに一日も早い復旧と復興を願っています。

近年、日本列島では毎年のように台風や低気圧、前線などによる豪雨や洪水、土砂崩れなどの災害が発生しています。災害の発生が予想される際の気象庁や各自治体の避難情報や警報も段々と変わってきていて危険度や緊急性の高い事態が起こりそうな時に発表される「特別警報」などというものもできました。これらの周知にはまだ課題があるようですが一定の評価は出来ると思っています。ただ問題はそれを発表するタイミングではないでしょうか。

■初動対応
今回は大災害が予想される前夜に与党自民党の議員センセーたちが永田町の議員会館でドンチャン騒ぎをしていたとかで野党から批判されていますが、安倍シンゾー総理は「初動体制に問題はなかった」とまた知らんぷりを決め込んでいます。この人達の言う”初動””とはあくまで大災害が起きてしまってからのことを指しているのであって災害が起きた時の被害を最小限にするという予防の視点がすっかり抜け落ちているのです。それこそが一番の問題だということにすら気づいていないこの国の国会議員センセーたちのオツムの中を覗いてみたいものです。
各自治体を束ねられるのは政府しかありません。この政府の中枢である総理大臣や国務大臣が、目の前に危機が迫っているまさにその時に酒宴に浮かれていたということをどのように考えているのか、安倍総理に伺ってみたいものです。でも誠実にわかりやすく国民に説明することはないんだろうなぁ。

ボクは災害が起きるたびに政府や自治体の”住民避難”に対する意識が現実とかけ離れていることを感じます。例えば、大雨が降って雨粒が地面を叩く音で家の中が轟音に曝されている中、真夜中になって自治体から「すぐに避難して下さい」という避難指示が出ても住民はもはや行動するすべを持っていないことが多いわけです。特に地方や山間部で高齢者にそれをやれと言われても、深夜では助けを呼べる人もなく外は大雨や川の氾濫による洪水などで外に出ることはままならず家の中に留まるしかないことも多いでしょう。

■ずっと前からわかっていたこと
しかしこの大雨が降ることは24時間以上前から予想されていたわけです。しかも24時間前には雨はほとんど降っておらず川も氾濫していません。昼間なら避難に協力してくれる人もいるでしょう。何よりも停電で街灯も消えた真っ暗な道をずぶ濡れになって歩いていく必要もないわけです。なぜ自治体はその時点でほぼ間違いなく降るであろう大雨に備えて避難指示を出さないのでしょう。避難指示を出しておいて災害が起きなかったら非難されるから?いや指示を出さないで犠牲者を何百人も出して非難されるより100万倍もマシです。しかし未だに自治体は予想される災害に備えて指示を出すことをせず、被害が出てから慌てて指示を出すという後手に回っているのです。

自治体の災害対策本部では目の前に迫る災害に備えて今か今かと避難指示を出すタイミングを見極めるために全員が徹夜で待機しているのかも知れません(もっとも災害が起きてから出ないと対策本部すら作らないところがほとんどですが)。しかし避難指示も出ていない一般の住民は心配しながらも夜は家で寝るのです。みんなが寝静まった真夜中や早朝に大雨の轟音に見舞われる中、避難指示を出すことを自治体はどう考えているのか、想像力の欠如としか言いようがないと思うのです。
なぜ前日の昼間の明るいうちに、災害が起きる前に避難所を開設して”避難を完了”させておかないのかといつも思うのです。だから何度も同じことを繰り返し何度も同じ被害を出す。”学習”という言葉を知らないのではないかと疑いたくなります。

一方の住民も、災害が起きなかったからといってそのことで自治体を非難してはいけません。災害はたまたま起こらなかっただけなのです。災害が起きていたら、避難していなかったら生きてここで笑っていることはなかったかも知れないのです。「起こらなくて本当に良かったね」と避難所で笑顔で話せばいいではないですか。避難しないでいて変わり果てた姿で涙の再会になるよりもずっといいと思いませんか。

■普通の考え方ではないのか?
企業の運用管理の中で、製品の最終的な納期から逆算して生産をスタートするという考え方があります。製品を作るには原材料の仕入れから加工、外注作業、組み立て、品質管理、発送、など数多くの工程が必要です。それぞれの工程には加工などに必要な時間があったり、複数の部品が揃ってからでなければ組み立てができないなどの事情があったりします。

その工程を設計するために「アロー・ダイヤグラム」という考え方があります。必ず守らなければいけない納期から必要な工程日数を差し引いて合理的なスタートを決めるやり方です。つまりその時点でスタートしなければゴール(納期)に間に合わなくなるという基準がわかる方法です。しかし長い間組織の中で仕事をしてきて、そんなことすら考えない人がたくさんいたことには驚きました。

アロー・ダイヤグラム

■マイタイムライン
数年前に鬼怒川の堤防が決壊して氾濫し、大きな被害を受けた茨城県常総市のことはまだ記憶に新しいと思います。あの災害の後、地域の住民たちが自分で始めた活動に「マイ・タイムライン」というものがあります。マイ・タイムラインとは、災害発生が想定される時間から遡った時点から時系列(時間の流れ)に沿って自分がやるべきことを予め決めておく作業工程表です。

例えば月曜日の明け方に被害が発生する可能性が高いのならまだ明るい日曜日の午後までには避難を完了しておこうと自分で決めてスケジュールを組むわけです。そして安全に避難するための経路や自治体のハザードマップなども参考にしながら「この橋は川が増水するとすぐに通れなくなるから別ルートを考えよう」「そのためには余計に時間が掛かるから避難開始時間を早めよう」などと考え、それを自治体に提出することで「私たちはこの日のこの時間には避難所に行きますから避難所を開設しておいて下さい」と申し入れるのです。

マイ・タイムラインは家の場所や家族構成、生活習慣などによって世帯ごとに違いますからそれぞれが自分が可能なスケジュールを作って自治会で取りまとめておくのだそうです。それによって災害時の状況把握もすばやく可能になったそうです。

この考え方は災害時でなくても普段の生活で活用できます。
例えば海外旅行で成田空港に朝8時に到着しなければならないとすれば、自分に都合のいい交通手段を使うなら遅くとも何時までには家を出なければいけないかが判ります。更にその時間に家を出るなら何時に起床しなければならないか、そのためには前夜何時に寝なければいけないか、旅行の準備はいつまでに終わらせておかなければいけないかなどが明らかになります。もちろんトラブルが起きた場合のバッファ(余裕)も考慮しなければいけません。それさえ作っておけば当日になっても自分の行動の進捗が進んでいるのか遅れているのかも一目瞭然です。

■いつも遅刻するヤツには
大抵の場合、遅刻してくる人はそれを考えていません。だから遅刻するべくして遅刻するのです。「出る前に準備してたら遅くなっちゃった」などとヌケヌケと言います。なぜ前の日に準備を済ませておかないのかと思います。そんな人にこの手法を教えても「面倒くさい」と言ってやろうとしません。だからまた次回も遅刻してきます。
そんな人にボクは集合時間を前倒しで伝えておきます。いつも彼が遅刻してくる時間分を前倒して教えておきます。果たして彼はみんなの集合時間に「遅れてごめん」と言いながらやって来ます。

「ケツカッチン」とは、後の予定が既に決まっているから遅れたり延長することができないことをいいます。大雨が降るのも飛行機の離陸時間も既に決まっているからケツカッチンなのです。