ニッポン人は英語しか話せないのか?

駅の切符売り場の前でガイジンたちが数人で集まっている。料金表を見上げる人もいれば販売機を訝しげに眺める人もいる。目的地までの乗車券を買いたいのだがどうしていいのか分からないのだろう。あなたはそのグループに近づいて声を掛ける。

「May I help you?」

世界中にある言語は方言なども入れると4,000とも5,000ともいわれる。しかし我々が普段耳にするのはそのほとんどが日本語であり、たまに中国語や韓国語、英語が耳に入ってくる程度である。
ところが街中で日本人らしからぬ風体の人達が話している言葉をよく聞いていると、それは英語でも中国語でも韓国語でもない言葉であることも多い。フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語、タイ語、ベトナム語(風)、インドネシア語(風)、アラビア語(風)など様々だ。ベトナム語やアラビア語などは区別もつかないのでそうじゃないかなと言う程度で判断した。
中国・韓国・東南アジアからの観光客も多いが中南米からの出稼ぎ労働者も多いのでポルトガル語やスペイン語も多いのだろう。

誰にでも英語で話しかけるニッポン人
そんな人達も日本人が声を掛けると日本語や英語で返事を返してくれることが多い。イギリス人やアメリカ人はそのほとんどが英語しか話せないが、その他の多くの国の旅行者は母国語の他に英語を話す人も多い。恐らく日本などの外国で自分たちの母国語が通じることが少ないため最低でも英語を話せるようにしておかないと誰とも意思の疎通が図れないのだろう。事実、ボクのスペイン在住のスペイン人の友人も小学生の頃から学校では英語が必須だったといい、ボクもスペイン語ではほとんど意思の疎通が図れないので自然と会話は英語ということになる。
つまり英語圏以外の人にとって英語は実質的な”世界語”になっていて自国の外に出たら最低限英語は話せなくては生活にも困るというわけだ。
だから日本に来る外国人旅行者も何はともあれ英語を話すし、日本人はガイジンならすべて英語が通じると思っている。

英語が母国語でない人のほうが多いのだ
以前にデンマーク人と仕事をしたことがある。彼らは最初会った時に「アナタ方にとって英語は外国語ですが僕たちにとっても外国語です。だから英語では上手く伝わらないこともあると思うけど条件はイーブンです」と英語で言った。北欧にはスカンジナビア半島だけでも20以上の言語があり彼ら同士でも会話が難しいことがあるのだという。今ではフィンランド語、ノルウェー語、デンマーク語など国ごとにいくつかの言葉に集約されているのでかつてのようなことはないらしいがやはり英語は必須だ。フィンランド語もノルウェー語もデンマーク語も国際社会ではマイノリティなのだ。

日本から海外に行くと場所によっては英語が通じないこともある。日本に置き換えてみれば、都内の小さな居酒屋や地方都市に行けば鉄道の駅でも英語を話そうとする人がいなかったりする。彼らは英語を話せないわけではない。日本人同士の会話の中でも普段から「サンキュー」や「バイバイ」と普通に言っている。話そうとしない、話せないと思っているだけだ。
今のほとんどの日本人は子供の頃から何十年も英語に触れ合っている。知っている単語の数は日本語を除けば圧倒的に多い。自分ひとりしかいない時に一対一で向き合えば英語で話さざるを得ないしある程度は話せる。話せないと思っているだけなのだ。ましてや相手が中国人なら日本人には”漢字”という武器がある。筆談だって立派な会話だ。

母国語で話しかけられる喜び
話は変わるが、海外に行った時に日本語で「コンニチワー」とか「アリガトウゴザイマス」「マタキテネー」と不意に言われて面食らったことはないだろうか。ビックリするがちょっと嬉しい気持ちにもなる。そもそも終戦後、占領軍が日本中に溢れた頃(そんな時代は知らないが)から日本語の地位は下がり世界中どこに行っても日本語なんて通じるわけがないと思ってきた。そこへきて思わぬところでニホンゴである。日本にやってくる外国人旅行者の増加や海外旅行などで訪れる日本人の増加がもたらした影響だと思われるが、海外での日本語の地位も少しずつ向上しているように感じる。

逆に日本ではどうだろう。ガイジンには英語でしか話さずフランス人にも「ハロー」と言う。フランス語など知らないという人でも「ボンジュール(コンニチハ)」とか「メルシー(アリガトウ)」なら聞いたことがあるだろう。フランス人だって日本に来て日本人にちょっとでも母国語で話しかけられたら嬉しくはないだろうか。
日本人はガイジンに日本語以外の言葉で話しかけると、相手はその言葉が話せると思って畳み掛けるように話しかけてくると思っている。そんなことはない(笑) もしそうだとしてもわからないものはわからないのだからその後は英語なり日本語で普通に話せばいいのだ。ガイジンたちを見るがいい。”コンニチハ”、”アリガト”、”サヨナラ”が言えれば「オレは日本語が話せる」と豪語している(笑)

2020年の東京オリンピックもそうだが今、日本にはたくさんのガイジンが来ている。英語や日本語で話しかけて相手の母国が分かったら、ドイツ人にはグーテンターク、イタリア人にはチャオ、中国人にはニーハオと挨拶してみてはどうだろうか。日本人が話す自分の国の母国語だ。格変化が違うと文句を言うことはない。きっと相手はニッコリと微笑んでくれるだろう。