たった一度の営業だけで諦めていませんか?

とりすがまだ若かった新入社員の頃、真夏の猛暑の中、営業研修という名目で大阪の御堂筋をローラーセールスしたことがありました。当時、関西地区の営業担当だったとりすは、同期の仲間と2人組で「オレは通りの左側、オマエは右側な」と言って片っ端から飛び込みセールスをするわけです。

もちろんお行儀の悪い営業方法ですからほとんどの会社では門前払い。行く先行く先で断られ続けるとしまいには自分を全否定されているような気がしてきて「これが社会の厳しさってヤツなのかぁ」と疲れ切ってホテルに帰って仲間とほろ苦い缶酎ハイを酌み交わしたものです。

それでも研修は1週間。まだまだ終わりません。上司に報告しても「1回行っただけで諦めてどうする!」「根性が足りない!」「相手が根負けするまで通い続けんだよ!」「オレが若い頃はそんなもんじゃなかった!」と怒られます。仕方ないので次の日も、またあくる日も御堂筋の同じ会社を訪問し続けるわけです。
2日目は初日と全く同じ反応です。中には「何度来たって同じですよ!(と標準語で)」と吐き捨てるように断る総務課長がいたりして、心の傷口に塩を塗られるようです。でも先方の課長は昨日来たとりすのことをちょっとは覚えてくれてたんですね。ちょっとだけ気が紛れました(笑)それから4日間(当時は週休2日ではありませんでした)、飽きもせず御堂筋にローラーセールスを繰り返しました。研修の最後の日には「暑いのによう頑張っとんなぁ(を関西弁で)」「ヤクルト飲むやろ?(を関西弁で)」と言ってくれました。なぜヤクルトだったのかは未だに謎のままですが、挙句には「また御堂筋に来たら寄っていきなさい(を関西弁で)」とまで言ってくれる人までいました。
大阪の人は、最初はぶっきらぼうでツッケンドンに断りますが何度も会っているとだんだんと友達のような口調になってきました。いいところですねぇ、大阪。

それから数年後、今度は同じように横浜でもローラーセールスをする機会がありました。横浜港・山下公園近くの官庁が多く集まるところです。関東人は冷たいので電話でアポイントを取ろうとしてもまったく相手にしてくれません。そこで大阪でやったようにノーアポで飛び込み営業です。やっぱり最初は門前払いです。大阪での経験もあるのでこのあたりは想定内です。そこで次の日も同じところへしつこく訪問します。あからさまに嫌な顔をする人もいますが、まぁこっちもセールスマンなので何とも思っていない顔をして挨拶をします。

そんなことを繰り返しているうちに「あんたも懲りずによく来るね」という人が出てきました。4~5回目の訪問のときです。すると同じ頃に、急に態度が柔らかくなって話に付き合ってくれるところが出てきました。もちろん中には「二度と来るな!」と怒り出す人もいましたが7~8割の人は程度の差こそあれ話を聞いてくれるようになりました。
そう、大阪でも4~5回目だったんです。人は面識のない人には警戒するものです。まず信用しません。
立場を自分に置き換えてみても「このセールスマンは自分からお金を巻き上げようとしてる」としか思いません。でも繰り返すことで顔を覚えてもらえるし信用も高まっていくんだということが身にしみてわかったときでした。この時もとりすが何をしたわけではありません。そもそもボクの話を聞いてくれないのですから(笑)
人は何度も会っていると何となく”知っている人”だと思うようになり、少しずつ警戒心も解けていきます。少しずつ、ですよ(笑) そしてその人の人となりがわかってくると親近感を持つようになるんだそうです。これはザイアンスの法則と呼ばれています。

・知らない人には攻撃的になり、警戒心を持つ
・接触回数に比例して好意を抱く
・その人の個人的側面を知ると、より親近感を抱く

ここでいう”接触”とは必ずしも直接会うことでなくても構いません。電話をする、メールを送る、手紙を書く、FAXを送るなんていうことも接触になるんですね。

誰でも知らない人といきなり仲良くなったりはしません(そう見せかける人もいますが)。
段々と心が打ち解けてきて相手のことを知るようになって初めて警戒心が緩みます。
セールスでも同じことでした。
とりすは”営業研修”で色々なことを学ぶことができたと、今では当時の上司に感謝しています。その方はその後、若くしてガンで亡くなってしまいましたが、生前は友達のように飲みに行って愚痴を言い合える関係でした(笑)

あなたはどうですか?
何かを始めた時、チャレンジしようと思った時、一度やってみてダメだと諦めてしまうことはありませんか? ダメでもダメでも「10回やったら上手くいくようになるんだ」と信じて続けてみると何かが変わるかもしれません。お笑い芸人の又吉さんが言うように「努力することは禁止されていない」のですから。