なぜ組織は動かないのか?その簡単な理由は…(1)

今週はマーケティングをちょっと離れて「ヤル気」についてのお話です。
先日、興味深い話を聞きました。それは…
「社長以外のスタッフは誰も売上げを増やそうとか利益を増やそうなんて思っていない」というのです。
そうかなぁ?営業部のトップセールスマンは頑張って営業して売上げを伸ばしていますよね? 現場の担当者だっていいモノを作って、良いサービスを提供して売上げを増やそうとしてますよね? もっといいモノを、もっとたくさんのモノを売って儲けようと頑張っているじゃないですか?

そうでしょうか?そうかな?とその人は言います。「みんな自分の評価を上げようとしてるだけじゃないかな?」

そうか、売上げを増やそうとしたりいいモノを作り出そうとするのは、組織の中での自分の評価を高めたいからなんだ、ということにやっと気づきました。そりゃそうですよね。会社の売上げが増えたってすぐに自分の給料が上がるわけではないんですから。社長は会社の売上げを伸ばすために”たくさん売った人に高い評価をつける”というインセンティブをつけたのに、社員にとっては”自分が高い評価を得る”ことが目的になってしまったわけです。手段が目的になってしまう。よく聞く話ですね(笑) それよりもボスに評価されてお気に入りになったほうがすぐにボーナスも増えるし昇給もします。つまり、たくさん売るよりもボスにゴマをすってお気に入りになったほうが手っ取り早いわけです。モロに大企業病です。

ところで、

かつてはあちこちで行われていた企業の社内運動会(昭和の時代の話です)。最近では希薄になった社内の人間関係を深めるために復活させる企業も多いのだとか。参加した人に聞くと「普段関わりのない部署の人とも一体感ができてよかった」という声が聞かれるようです。普段は業務で深く関わりのある同じ部署の人との一体感すらないのに(笑) どうして運動会ではたったの1日で一体感が芽生えるんでしょうね?

それは、
スポーツでは誰もがルールや目的が分かっているので、始まってから5分もすれば「自分が何をすべきか」が自然にわかります。他の人との協力も連携も自然にスムースにできるようになります。バレーボールなら背が高い人はアタックやブロックに、そうでない人はセッターやレシーブにと、自分が力を発揮できるセクションにやりがいを持って臨んで、皆んながそれを評価するからです。相手のサーブをレシーブミスしたって「ドンマイ!ドンマイ!」「ナイスファイトー!」

ところが職場に戻った途端にそうはいかなくなります。業務に戻った途端に協力関係はなくなり、自分の持ち場を守ってミスをしないこと(保身)だけに集中してしまうからです。どうしてこういうことになるのか?それは評価の仕方が間違っているからなんですね。組織の人事評価で多く使われている評価基準の一つに業務の「正確性」があります。「いかにミスをしないか」という基準で測定されることがほとんどです。従業員に「正確性」を求める時にも「ミスの数」によって評価し正確にこなした数には誰も注目しません。
試しに現場のマネージャーに「部下の中で一番正確に業務のできる人は誰ですか?」と訊いてみると、殆どのマネージャーはまず答えられません。ところが「一番ミスの多い人は誰ですか?」と質問すると、たちどころに誰かの名前が挙がるわけです。ミスを犯した数しか見ていないんです。この”測定”では敗者を明らかにすることを目的にしているわけで勝者を明らかにすることは考えていません。”測定”では何が良くないのか、何が欠けているのか、何が歩調を乱しているのかが示されます。

製造などの現場で事故が起こるとまず犯人探しと「なぜなぜ分析」が始まります。トヨタ自動車の品質管理部門で行われている事故原因の追求手法ですね。なぜ?を5回繰り返して自己の本質的な原因を明らかにしよう、というやり方で、日本の多くの製造現場などで取り入れられています。とりすもサラリーマン時代にはよくやっていました。でも「なぜなぜ分析」は”欠点”を見つけるための手法であって長所を探して評価するわけではないんです。なぜミスをしたのか、なぜうまくいかなかったのか、なぜ失敗したのか、なぜお客様を怒らせてしまったのか? なぜお客様が喜んでくれたのかはほとんどの場合、問題になりません。だって”問題”ではないのですから。

その結果、職場で測定されるのはミスばかり。「欠勤」はカウントされるが「出勤」はカウントされない。例えば、プロ野球の松井秀喜選手がバッターボックスに立つたびにホームランを打とうとするのではなく三振を恐れていたら、彼のキャリアはどうなっていたでしょう? 「三振しないこと」が重視され、それで評価を得られるなら「三振しないこと」が目標になりホームラン数は減ったでしょう。企業や組織では「三振しないこと」が目標にされることが非常に多いんですね。

そうやってネガティブな面ばかりに目を向ける”測定”は、人を萎縮させ能力を発揮できなくします。バスケットボールでも試合終了直前に相手のゴール下から起死回生の超ロングシュートを放つ選手がいます。先日もそのシュートが決勝点になって逆転勝ちした試合がTVのニュースになっていました。
ゴールの失敗を測定して”失敗しないこと”が評価基準になっていたら、この選手はシュートを放ったでしょうか?

ここで言うネガティブな”測定”では何も生み出しません。ポジティブな評価で何よりも重要なのは「どうすれば勝てるか?」が解る点です。
ポジティブな面に目を向けてカウントして自分がどこまでできているのかを知れば「これからもこの調子で励んでいこう!」という気持ちになると思いませんか?ゴルフコースやサッカーコートで味わうあの「勝てる!」という気持ちになるなることができるんです。

私たちは

 ・ヤル気の湧くもの(興味があること、楽しいこと)
 ・目標がはっきりしているもの
 ・進捗度合いが明確に示されるもの

に惹かれるものです。そりゃそうですよね。ツマラナクてヤル気が湧かない、何をすればいいのかよく分からない、全体のどこまで終わったのかも分からないことに全力を注げって言われても、ねぇ(笑)

じゃあ具体的にどうやって何を評価していけばいいのか? 次回はそのあたりに触れていきたいと思います。