金の卵

とかく日本人は忘れっぽいし飽きっぽい。
何か嫌なことがあってもすぐに忘れられるのはオトクな性格かもしれないが、悪徳政治家が悪さをしても次の選挙までにはそんな事はすっかり忘れてまた投票してしまう。すぐに水に流せるのは爽やかなんだかバカなんだかよく分からない。
東北の地震と原発事故の時は”絆”だの”脱原発”だのと大騒ぎしたくせに、しばらくすると原発の再稼働も容認しお隣さんとの絆も冷めてしまった。熱しやすく冷めやすい”瞬間湯沸器”と揶揄されたあの頃の怒りっぽいオヤジにも劣る有り様であるが、瞬間湯沸かし器など見たこともない子供がほとんどになったきた今となっては致し方ないのかも知れない。

現在日本には21の世界遺産がある、らしい。そのうちいくつを覚えているだろうか。自分の住んでいるところの近くや出身地の世界遺産なら覚えているかも知れない。正確ではないがざっと上げてみると
1.法隆寺(奈良県)
2.姫路城(兵庫県)
3.京都の文化財群(京都府)
4.白川郷や五箇山の合掌造り(岐阜県・富山県)
5.原爆ドーム(広島県)
6.厳島神社(広島県)
7.奈良吉野の文化財群(奈良県)
8.日光の神社仏閣(栃木県)
9.琉球王国の遺産群(沖縄県)
10.熊野古道(奈良県・和歌山県・三重県)
11.石見銀山(島根県)
12.中尊寺(岩手県)
13.富士山(静岡県・山梨県)
14.富岡製糸場(群馬県)
15.明治日本の産業革命遺産(福岡県・佐賀県・長崎県他)
16.国立西洋美術館(東京都)
17.沖ノ島(福岡県)
18.屋久島(鹿児島県)
19.白神山地(青森県・秋田県)
20.知床(北海道)
21.小笠原諸島(東京都)
となっている。いくつ言えただろうか?
そういうボクだってネットで検索しながらここに書いているのだから大きなことは言えない。世界遺産に登録された時にはニュースなどで大騒ぎされるがしばらくすると地元の人以外はほとんどの人が忘れてしまうのだ。

世界遺産とは人類が未来に残していくべき文化や自然を守っていこうという趣旨なのだと思っている。ところが日本では「世界遺産登録=町おこし、村おこし」としか捉えられず、観光客の増加だけを目的にしているように見えないでもない。その証拠に観光客の増加とそれに伴う地元収益の向上だけが大げさに取り上げられる。そしてその遺産の本来の意義について深く語られることはほとんどない。そして「守っていく」趣旨はすぐに忘れられて遺産は崩壊し見捨てられたテーマパークのようになってしまうのだ。

日本人は、登録されるまでは大騒ぎするが登録されてしまうとほったらかし、とまでは言わないが”遺産を守ろう”という姿勢が見られないのはクールではない。もっとも”世界遺産”だからとありがたがって大挙して群がり踏み荒らしてしまう観光客も観光客だ。自分は好きでもないものを世界遺産だというだけで足跡をつけに行くのはお笑い草である。

もちろん貴重な(絶滅しかかっている)ものを守っていくには先立つものが必要だ。そのためにはたくさん集客することも大切だろう。しかしそのために守るべきものが壊れてしまったら元も子もない。

青い空にポッカリと浮かぶ白い雲、静かに繰り返す潮騒を聞きながらのんびり過ごす夕暮れの砂浜。それこそが魅力だった小さな島に大資本の大型リゾートができ、サンゴ礁の海を埋め立てて空港を作り、静かでのんびりした環境があっという間に失われてしまう。そんな例をボクたちはもう見すぎた。
島には大勢の観光客がやってきて経済は潤い働き口が増えて生活が安定したかも知れない。しかしその魅力を失ってしまった小さな島をまた訪れたいという人はどれくらいいるのだろう。

イソップ物語に「金の卵を産むガチョウ」の話がある。
その場所にとって人々にとって何が金の卵でその卵を産むガチョウが何なのかをよくよく考えて行動すべきなのは今も昔も変わっていない。