なぜゴミ屋敷はできるのか

街かどでも「何があったの?」と思うほど庭先やらそこら中にゴミをうず高く積み上げたような家を見かけることがある。いわゆる「ゴミ屋敷」だ。
先日テレビを見ていたら、家や部屋を片付けられずにゴミ屋敷にしてしまう人は”病気”なんだと言っていた。病気なら病院に行けばもっともらしい病名をつけて診療してくれるのだろう。それは保険診療なんだろうか。そんなものが病気になるくらいだから日本の社会保険料がどんどん高くなるわけだと変なところで納得してしまった。

ワークスペース。作業場所のことである。
何かの作業をしようと思う時には倉庫から材料を出してきてワークスペースで作業をしなければならない。倉庫は材料でいっぱいだし出荷場所は出荷待ちの商品でいっぱいだ。
誰でも作業を始めようと思った時、両手に材料を持って手が塞がっていたらいたら何もできない。それを一旦作業台の上に置いて手を自由にしてから作業を始めるだろう。この”一旦置いておく”のがワークスペースの重要な役割である。
簡単なことでいえばキッチンの洗い物でも同じだ。シンクの中が洗い物で山盛りになっていたら洗い始める事ができない。洗うためのスペースがないからだ。作業を始めるには山盛りになった食器や調理器具を重ねたり積み上げたり一旦シンクの外に出したりして整理し、シンクの中にワークスペースを作ることから始める必要がある。洗った皿の水切りをするためのカゴも片付けて空にしておかなければ今度はそちらが山盛りになる。水切りカゴが山盛りになっても食器を拭いて戸棚にしまう作業はできなくはないが、やはり取り出す時に引っかかって効率が落ちる。

部屋の片付けも同じことだ。部屋の中も散らかしたものやゴミで山盛りにしてしまうとそのままでは片付けができない。ゴミ屋敷の片付け業者も片付け名人のカリスマ主婦も山盛りにしてしまったモノを一旦外に出してワークスペースを作るところから始める。ゴミの山があまりにも大きければ庭など別の場所にワークスペースを新たに作ることから始める。いずれにしてもワークスペースを埋めてしまうほどモノを詰め込めば片付ける時の手間は何倍にもなるわけだ。

これは納戸や物置、蔵(今では蔵のある家は少ないが)などでも同じだ。まずモノを出し入れするには置いてある仕舞ってある場所までの通路が確保されていなければならない。通路にまでモノをおいてしまえばその奥のものを取り出す時には一旦手前のものを出さなければその場所にたどり着くことさえできない。

コンピュータにもワークスペースがある。”メモリ”という言葉をお聞きになったことがあると思う。コンピュータも作業を始めるにはハードディスクなどのデータ倉庫から一旦メモリというところにデータを取り出して作業する。この時メモリが十分に大きければ作業は早く効率的に進むがメモリが足りなければ作業ははかどらず、運が悪ければコンピュータがフリーズして動かなくなってしまう。つまりワークスペースの大きさが作業の効率化を左右するわけだ。ワークスペースは大きすぎてもムダだが必要最低限のスペースは確保する必要がある。

人の頭の中も同じだ。やることをやらなければならないことを頭の中に無理やり押し込んで精神がニッチもサッチもいかなくなっている人を見かけることがある。頭のいい優秀な人に多い。自分ではできると思って抱え込んでしまうのだがワークスペースのことを忘れて詰め込みすぎてしまうのだ。するとゴミ屋敷の片付けと同じように「どこから手を付けていいのかわからない」状態に陥る。

こんな時はどうすればいいのだろう。人の頭の中に意識的にワークスペースを作ることは難しい。ならば一回にやるべきことの量を減らせばいい。つまりやるべきことを整理して分割するわけだ。問題はこの時に「すべての作業は繋がっているから分けることはできない」と思い込んでいる人だ。優秀な人は自分の能力が高いから一気に全部できることが多いしやろうとする。しかし限界を超えてしまった時には潔く降参して作業を分割することを始めたほうがいい。
作業は必ず分割できる。複数の人に作業を割り当てる要領で考えればいい。どうしても作業同士の連携が必要ならその時だけは作業者同士が連絡を取り合えばいい。頭の中の作業なら作業単位をもっと細かく分けるのだ。

そしてもっと大切なのは誰か他の人にも手伝ってもらって任せるということである。これこそが優秀な人ほどできない陥りやすい罠だ。自分以外にできる人がいないと思ってしまうと全部を自分でやろうとする。そして自分をフリーズさせてしまうのだ。

人の能力には差はあるが言うほど大きなものではない。仮に「自分でなければできない」と思うようなことでも2人だったらできるかも知れない。2倍の時間をかければできるかも知れない。300倍の時間を掛けて教えればできるようになるかも知れない。
いずれにしても自分ひとりで解決できずにフリーズしてしまったら誰かに頼るべきだと思う。そのために普段から信用できて頼りになりパートナーを常に探し続けることが必要なのである。

ワークスペースは余っているただの空きスペースではない。残しておかなければならない必要なスペースだ。くれぐれも「まだ空いているから」とパンパンに詰め込んでしまうような愚を避けるように心掛けたい。