弱者の戦い方(その2)

さて今週も先週に続いて英国人のランチェスターが考案した戦略の続きのお話です。
前回は

 1.局地戦で戦う
 2.戦力を一点に集中する
 3.一騎討ちに持ち込む

というところまでお話しましたね。
弱者が強者と渡り合うための戦略として「全面対決をしてはいけない」という内容です。今日はその続きの、

 4.接近戦に持ち込む
 5.陽動線をやる

について聞いてみてください。

「接近戦」ってもちろん御存知の通り、相手に近づいて戦う戦術です。でもこの場合の”相手”とは「強者」のことではありません。顧客、つまりお客さまです。大手(強者)はお客さま(例えば消費者)と直接取引をすることはほとんどありません。なぜなら”面倒くさい”し、”手間(お金)がかかる”し、”カッコ悪い”からです。ですから流通ルート(サプライチェーン)を作り上げて問屋などを通して一気に大量に売りさばきます。
流通は大手の製品やサービスを喜んで扱いたがります。だってテレビCMなどで大々的に宣伝するしブランド力もあるから”売りやすい”んです。誰だって売りにくいもの、売れるかどうかわからないものよりも、お客さんが欲しがるもの、向こうから買いに来てくれるものを売りたいじゃないですか? だから弱者が同じ方法をやっても勝負にならないのは目に見えていますよね。

じゃあどうするか?

弱者は自分で売り切る力を持たなくてはダメです。”誰か他の人”が売ってくれるのを頼りにしてはいけないんです。そのためには”お客さまに接近すること”をしなくてはいけません、面倒くさくてカッコ悪くても。ちょっと大きなスーパーやデパ地下ではよく実演販売ってやっていますよね? アレってほとんどが中小の(というと語弊がありますが)食品メーカーの商品じゃないですか? 「味の素」や「ネスレ」などはキワモノに近い新商品でもなければ、定番商品の実演販売なんてやりません。だってそんなことしなくたって勝手に売れるんですもの。

ただ、ここで言う接近戦は弱者の戦い方の一つです。広い意味で言えば「強者が真似できない事をやる」って言う事なんですね。
弱者の戦い方があるように強者には強者の戦い方があります。その一つに「弱者の良いところを真似して潰す」というのがあります。弱者がせっかく独自の技術やサービスで差別化しても大手に簡単に真似されてしまうと価格競争や大規模な宣伝、ブランド力などで一気に攻められちゃうんですね。だから弱者は大手が真似できないこと、やりたがらないことをやって差別化しないといけないんです。
例えば、お客さまとのコミュニケーション一つにしてもお客さま一人ひとりと個別に相談したり、お客さまの顔と名前を覚えてお客さまの名前で呼んでみる、というようなことです。大手はそういうことが苦手ですし面倒くさいのでやりません。
大手がやりたがらないことで差をつけよう、ということです。この辺りはまた別の回でお話ししましょう。

ここまでお話してきて聡明なあなたにはあらためてお話することもないと思いますけど、この5つのやり方のそれぞれはあくまで戦術、つまり戦うための技術です。一方、戦略っていうのは「こういう戦い方(戦術)を組み合わせて戦おう!」という考え方のことです。長々と話していると「戦略」と「戦術」がごちゃまぜになってしまうことがありますから一息ついて、落ち着いて進めていきましょう!

では「5.陽動戦をやる」とは具体的にはどんなことでしょう?
陽動戦は撹乱(かくらん)戦ともいわれて相手の作戦を引っ掻き回すことです。要するに「相手が思いよらない方法で展開し敵を動揺」させればいいわけです。よく引き合いに出されるのはアサヒ飲料が販売している「WONDA朝専用缶コーヒー」でしょうか? 缶コーヒーなんて豆がどうの、製法がどうのと言っても味なんて大して変わりません。(缶コーヒーマニアの方、スミマセン!)
何が違うのかっていえば売ってる自動販売機の数です。これがモロにメーカーのシェアに結びついているわけです。買う方も多少の好みはありながらコカコーラの自販機しかなければジョージアを買うわけです(笑)

そんな業界ですから「朝専用」と謳うことで差別化しようとしたわけです。じゃあ午後に買う人のことはどうでもいいってこと? という声が聞こえてきますが、えぇどうでもいいんです(笑) 缶コーヒーの需要の半数以上はそもそも朝なんだそうですから。これをもっと昔からやっていたのはキリンの「午後の紅茶」ですかね。もう完全な定番商品になっています。

でもこれは「大手」がやった話。弱者は圧倒的な需要があって売れそうなところを攻めてはいけません。そんなマーケットには競合もたくさんやってくるので勝負にならないからです。
そこで弱者がやった例としてこれまたよく出てくるのが「ゴリラの鼻くそ」(笑) 島根県の 岡伊三郎商店というところが作っているお菓子です。
「食べ物に鼻くそとは何だ!」という人もいるでしょうが、そんな人は相手にしていません。なんでこんな名前にしたかといえば「動物園で売ってもらえるかもしれないから」だそうです。そして今では上野動物園や北海道の旭山動物園など全国の主な25ヶ所以上の動物園で扱われているそうです。
でもこれは名前の面白さだけではないんですね。国産黒豆を使った甘さ控えめの健康にもいい美味しいお菓子なんだそうです。(まだ食べたことがありません。スミマセン)つまり、ただ「面白い」だけではなくて(美味い×体に良い×面白い)の三拍子そろったお菓子だということなんです。基本は「いいもの」であることが大前提なのはどこの業界でも同じですよね。ちなみにこれに気を良くして「マントヒヒの鼻くそ」「クジラの耳くそ」「ゾウのうんち」なども作ったそうですが、あまり売れなかったそうです(笑) だって陽動作戦ですから。

大手は「誰にでも好かれる」ことを求めますが、弱者は的を絞らなくてはいけません。前回お話した「局所戦」にもつながることですが、弱者は、戦力を分散せずにコアなファンに訴えて好かれることが大切なんです。ここまでお話すると「それじゃあ売上げが減っちゃうだろ!」と心配されますが、なんの、ほとんどの場合で売上げは1.5~3倍も増えています。家のリフォームだってトイレのリフォームをしようと思っている人には、「家のリフォームなら何でもやります!」より「トイレのリフォームでは地域No.1の実績」の方が心に響きませんか?