新品買いますか、修理しますか

「保証書」というものをほとんど使ったことがない。買ったものが壊れる時はたいてい保証期間が切れた後だ。以前は保証期間が切れた後でも保証書がなければ有償修理さえしない、というような無法なことを言うメーカーもあったが、最近ではあまり目にしないような気がする。それでも取扱説明書と保証書をセットにして大事にしまっているボクは貧乏性なのだろうか。
国内S社の家電製品は昔から、すべての製品にタイマーが内蔵されていると言われ、保証期間が切れた途端に壊れると揶揄されたものだが、その伝統は今も受け継がれているのだろうか。

S社に限らず壊れた時にはいらないものでない限り「次をどうするか」を考える。そもそもいらないモノは使われないので壊れていることにさえ気付かないこともある。
選択肢は主に2つある。修理するか新しいものに買い換えるかだ。長く続くデフレの影響で修理するよりも新品に買い替えたほうが安いことも多い。修理費が高騰していることもその要因だろう。
以前に、動かなくなった国産の”バーミックス”(バーミックスは海外製品の商品名だがそう書いたほうがわかりやすい)を修理に出したところ、2万円前後で買ったものなのに1ヶ月の修理期間後に2万円以上の修理費を請求されて驚いたことがある。それならメーカーも新品交換したほうが安上がりなのではないかと思ったものだ。このときにボクを満足させたのは「モッタイナイ精神を貫いた」という自尊心だけだった。最近ではほとんどのものがこの有様だ。

新製品に買い替えた時には今まで使っていたモノより”安く”て”高性能”になっている場合が多い。しかし修理した場合は当然のことながら元の古い製品のままだ。もっとも新製品の使い勝手が大幅に変わってしまっていると、慣れるまでに時間がかかるというデメリットはあるかも知れない。
たとえばパソコンのプリンタ。使用頻度があまり高くない人だと、バカ高い交換インクを買うよりも、時期によっては新製品に買い替えてしまったほうが安かったりすることもある。いくらメーカーがインクカートリッジで稼いでいるとはいえ、いかがなものかと思う。
また新しいものを買うとある種の”物欲”も満たされる。機能的には今まで使っていたものとあまり変わらなくても”新しいもの(中古品であっても)”というだけでちょっとしたワクワク感を感じる人も多いと思う。

先日、家の玄関の鍵が壊れた。外から鍵を鍵穴に挿してもビクともしなくなった。外出時には鍵をかけられないし帰宅時に開けることもできない。まさにニッチもサッチもいかない状態になった。鍵の紛失も含めてこういうことはよくあるらしく、調べてみると「鍵の110番」というような業者がたくさん見つかった。多くの人は深夜に帰宅したが鍵をなくして家に入れない、というような緊急事態であることが多いらしく24時間対応で駆けつけてくれるところも多いようだ。ボクの場合は家には入れていたしそれほど緊急でもなかったので翌朝に来てもらったのだが、見積り額を聞いてたまげた。2ヶ所(ワンドアツーロック)で6万円だという。しかし直さないことには仕方がない。部品だけ買って交換を自分でやれば工賃の分は安くなりますよ、というので4万円で部品を買って自分で交換した。(実は前日に途中まで自分で分解してみて、交換できそうなことは分かっていた)
あとで、交換した部品を見てネットで検索したところ、交換部品が2個で1万4千円で手に入れられることがわかった。鍵の寿命は5~10年だというので次回壊れた時の交換パーツとして早速取り寄せてある。これなら緊急時でも即座に自分で直せるというわけだ。

このように最近ではD.I.Yよろしく自分で修理できるものも少なくない。ちょっとした知識さえ持っていれば部品を買ってきて自分で格安で修理できるようになってきた。そしてネットを探せばこれらの交換を手がけた人の体験録が見つかるので簡単なことだ。親切な人はどこにでもいるのだ(笑)
これは多くのメーカーや修理業者で専門の職人が少なくなり修理のできる人がいなくなった結果、内部の部品をパッケージ化してユニットごと交換すればいいようになってきたからである。そして交換ユニットの内部はほとんどの場合は簡単には開けられないようになっており、仮に開けられたとしてもシロウトの中途半端な知識では修理などできないほど複雑怪奇だ。

家の鍵などというものはさほど性能が進化するものではないから、同じものに交換したり修理すれば問題ない。ところが短期間でより優れた新製品が続々と発売される市場では修理よりも買い替えを選択する可能性は高い。同じ金額を支払うのであれば使い勝手がよく高性能なものに置き換わってくれたほうがありがたい。しかも修理には送料や修理期間も必要だ。今や新品が翌日に届く時代だ。
逆にスポーツ用具や楽器などの使い勝手やフィーリングを変えたくない、というものもあるだろう。ゴルフクラブやバイオリンなどの弦楽器、金管、木管楽器、打楽器など、多くのスポーツ用品や楽器には専門の修理職人がいる。ボクも学生時代には吹奏楽部でトランペットを吹いたりしていたので出入りの楽器屋さんに修理に出すこともあった。楽器は弾いているうち吹いているうちに音色が変わってきて自分に馴染んだ楽器に変わってくる。修理職人はそれを心得ていて壊れた部分だけをフィーリングを変えないように修理するのだ。これは新品を買えばいいというものではない。

パソコンなども仕事などに使っていると自分の癖がついてくる。日本語変換などはいい例かもしれない。しかし最近はこれらがクラウド化されてインターネット上のサーバなどに保存されるようになっている。つまり新品のパソコンに入れ替えてもその瞬間からインターネットに繋ぎ、使い慣れた自分好みの癖だけは引き継がれているという素晴らしい時代になっている。
もちろんセキュリティの不安を訴えて拒否する人もいると聞くが、業者の専門家が管理するサーバと、シロウトがいい加減に触っている自分のパソコンのセキュリティを考えれば、どちらを選択することが有益なのか自ずと答えは出ている。

多くのメーカーはカスタマーサービス部門を縮小している。言ってみれば「売りっぱなし」の傾向はこれからも進んでいくことだろう。その中でどの分野がサービスを必要とするマーケットとして残っていくのか、家や車やスポーツ・趣味のモノのサービスは残っていくような気もするが予断を許さない。
難しい時代である。