現場を知らないオトナたち

■ローソンフレッシュピック
先日、コンビニ大手のローソンが生鮮食品の扱いを始めるというニュースがあった。今までローカルなコンビニでは生鮮野菜などの食品を扱っているところもあったが、大手では初めてなのだという。しかしそれは店頭販売ではなく事前に注文しておいて夕方以降に店舗で受取る方式なのだという。いや、それはそれでいい。昼間に買い物のできない人が勤めの帰りに夜遅く受け取りたいことも多いだろう。それはそれでいいのだ。気になったのは会見に出てきたローソンの社長の言い草だ。

「帰りにローソンでパッと受け取って家に帰ってザッと料理を作る。そんなことが簡単にできて食生活も豊かになるんです」
そうですか、ザッと簡単に料理ができるんですか? やってもらおうじゃありませんか。深夜に疲れて帰ってきても材料さえあれば、ザッと簡単に料理ができるというなら、あなたにも作ってもらおうじゃありませんか。

バカを言ってはいけない。こいつは料理など作ったことがないに違いない。料理の何たるかが全く分かっていない。あなたがデスクの上の書類に目を通して決裁の判子を押すのと同じように単純に考えてもらっては困る。
現場を知らないリーダーはすぐそういう事を言う。ならやってもらおうじゃありませんか。簡単なんでしょ? それならあなたにも出来るはずだ。

■料理なんて簡単なことだ
どこかでテレビの料理番組でも見たのだろう。用意した材料をフライパンに入れて、計って用意してある調味料をパッと入れて、ザザザっと炒めて「はい完成」。まわりのゲストも「すごく簡単ですねぇ」なんて言ってる。はい、じゃああなたの家でやってみてください。
普段から料理をしている人ならわかるが、そんなに簡単にできるものではない。料理もしたことがないから現場がまったく分かっていないのだ。料理はパッと出来るほど簡単ではないし手軽でもない。手軽にできるのは冷蔵庫に下ごしらえした材料が全部入っている時の野菜炒めくらいである。
まず、

(メニューを決めて買い物に行く)
・米を研いで炊飯器で炊いておく
・冷蔵庫などにある食材を取り出して洗う
・料理によって切り方を変えながら包丁で切る
・蒸したり茹でたりして下ごしらえをする
・棚から調味料を取り出して計って用意しておく
(目分量ならやらなくてもいいが美味しく出来る保証はない)

~~~テレビでやるのはここだけ~~~
・フライパンや鍋などに材料を入れて煮たり炒めたりする(その際に準備しておいた調味料を入れる)
・食器を準備して盛り付ける
・食べる
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

・調理器具や食器を洗う
・食器や調理器具を決まった場所に仕舞う

■料理もできない人間に仕事なんて
料理とはダンドリの勝負だ。作り始めてから材料や調味料がないことに気づいても後の祭りだ。美味い料理になる保証はない。下ごしらえだって無数の知恵と経験と手間の賜物だ。

・グリーンアスパラの根に近い部分は皮をむかないと茹でても固くて美味しくない
・じゃがいもは新じゃがの小芋以外は皮を剥かないと口触りが悪い
・油揚げは湯通しして油を落とさないと臭い
・こんにゃくは一旦アク抜きするか湯通ししないと独特の匂いが残る
・麻婆豆腐を作るには絹ごし豆腐を一旦熱湯で温めてから切らないと煮崩れする

ほんのごく一部だ。
いつだったかどこかで、ほうれん草の根の赤い部分が香りがいいと聞き知ったらしく無邪気に「食べたいな」と言われたことがある。畑から抜いてきたほうれん草の根に近い部分には細かい隙間に泥が詰まっていて、それを洗い流すだけで結構な手間がかかるのだ。「洗ってくれるなら作って差し上げよう」と言ったら機嫌を悪くした女子がいた。その後、彼女とは二度と会ったことがない。
大根の桂剥きをしろというのではない。普通の料理を作るにはオマエの考えている10倍以上の手間がかかるのだ。

■君は現場を見たか!
偉そうに上から指示している人間は、大抵が現場で何をやっているかを知らない。だから「やれ」というのではない。できなくてもいいがやっていることくらいは知るべきだ。知りもしないで指示だけするから現場からバカにされる。現場が動かない。現場も回らなければ売上も利益も上がらない。そしてダメなリーダーの烙印を押されて飛んでいく。飛んだ先でもまた同じことを繰り返す。そんなダメなリーダーを見極められない経営者はやがて右肩下がりになる。当然の結末だと思わないか?

ローソンの社長様へ
深夜の「ローソン」で食材をパッと「ピック(アップ)」してザッと簡単に料理が作れるなら、それで豊かな食生活が得られると思うなら、どうぞあなたの家でもやってください。豊かな食生活になることをお祈りしています。