落ち着きのない人

ピョンチャン・オリンピックでは「そだねー」の会話でカーリング女子が話題になった。カーリングは長野オリンピックのときに初めて見て「面白い競技だなー」と思った。それ以来、日本が出ていようが出ていまいがオリンピックのときには見ている。というかオリンピックの時以外にテレビで放映されることはほとんどない。ボクがカーリングを面白いと思うのは”完全弾性衝突”の気持ちよさに加えて、先に投げた”布石”があとでどんな効果をもたらすのかを想像しながら先を読んでいくストーリー性だ。
完全弾性衝突の魅力はビリヤードプレイヤーや物理屋特有のものかもしれないが、先を読むストーリー性は囲碁や将棋、チェスにも通ずるものがあるようにも思う。指す順番は決まっており一手の有利が一つの失策によって簡単に逆転されてしまうところは非常にスリリングだ。

将棋や囲碁といえば永世七冠の羽生善治さんや七代タイトルを持つ井山裕太さんが国民栄誉賞に輝いたことは記憶に新しい。彼らは十数手も先を読んで戦術を考えるのだといわれるが、カーリングでも両チーム合わせて1エンド16投を読んでストーンを展開していく。将棋や碁では「間違えて石や駒を置く」ということはまずないが、カーリングでは石を置くにも技術が必要でその成功や失敗までも織り込んで作戦を立てなければならないのは奥の深さだ。

どこに行ってもウロチョロしている人がいる。右に行っては立ち止まり、引き返すのかと思えば少し進み、今度は左に向かって一歩進んだかと思えば考え込んでいる。傍から見ると何を考えているのかサッパリわからないが、本人は一生懸命に考えているつもりなのかもしれない。それは駅のホームだったり映画館だったりスーパーだったりする。
ベテランのサラリーマンややり手の主婦は駅やスーパーでも動きにソツがない。どの車両に乗れば空いているのか目的の駅で上手く乗り換えられるのか、トラブルがあった時にいち早く情報を仕入れて素早く作戦を立てる術を考えている。毎日の買い物をする主婦も、スーパーでどのルートを歩けば目的のものを素早く集めた上に、足りないものを的確に思い出して補充できるかを心得ている。品切れに遭遇した時には夕食の献立のどの部分を変更すれば問題ないのかすら考えている。

そこへくると毎年新学期が始まる4月には慣れない新入生や新卒サラリーマンが街のあちこちで右往左往する姿を見かけるようになる。彼らはまだその先の展開を読むことに慣れていないがゆえに右往左往する。しかししばらくして周囲の様子がわかるようになると古参のサラリーマンのような落ち着きを醸し出すのだ。

ところが職業や年齢にかかわらず、いつまで経ってもウロチョロと落ち着かない人がいる。普段から考えが浅く、衝動的に行動する人たちだ。彼らは先を見ようとしない。ほんの一瞬先のことすら考えようとしない。だからすぐに間違った行動をしてそれを繰り返す。常に右往左往して落ち着きがない。いつまでも歩き回り続けているが目的地が分かっていないし目標も見えていない。

「下手な考え休むに似たり」とは昔からの諺だ。ダメな考えは何もしないのと同じだということだが、何も考えていないよりは下手な考えの方がいくらかはマシなのではないかと、時々思っている。