キッカケは偶然に

ピョンチャン・オリンピックも無事に終わって選手たちも家路についたのだろうか。もちろんまだウインターシーズン中だから「まだまだ世界中を転戦するぜ」という選手もいるだろうが、取り敢えずひと区切りをつけて故郷に帰る選手も多いのだろうと思う。大活躍した選手にも、残念ながら今回は実力を発揮しきれなかった選手にも、選手たちを指導し続けてきたコーチにも監督にも、そして何よりそういった人たちを陰から経済的に人的に支援し続けた関係者の方々にも、アスリートたちを応援していた日本人の一人としてまずは「お疲れさま」と申し上げたい。

オリンピアンたちは檜舞台に立てばトップアスリートであり誰からも最高に尊敬される対象だが、彼ら彼女らも家に帰ればそれぞれの顔がある。それはお父さんだったりお兄ちゃんだったり、学生なら同級生だったり先輩だったり後輩だったりする。娘や息子の顔もあり孫や甥、姪の間柄だったりする。常にテレビカメラに囲まれて注目を浴びる英雄の顔だけではない何かがそこにはある。
実家で食べるカレーが大好きだったり、居間のこたつでゲームしてお母さんに「いい加減にしなさい」と怒られたり、友達とショッピングに出かけたりする顔があるかもしれない。それはオリンピアンたちのもう一つの顔であり特性だが、家族や友達でもない人は知らない一面だ。

人やモノ、コトにはいろいろな特性がある。例えば「冬だからスキーに行く」もそうだし「サラリーマンだから朝から出勤する」もそうだ。でもちょっと見方を変えると常識とは違うものが見えてくることもある。
以前、ネット通販のリコメンデーションエンジン(過去の検索や購買履歴からおすすめ商品を表示してくれる機能)が注目を集め始めた頃、しょっちゅう引き合いに出されたのは「紙おむつ」と「ビール」の相関関係だ。アメリカのスーパーマーケットでは、お父さんがママに「子供の紙おむつを買ってくるように」と言われてスーパーに行くと、ついでに自分用の缶ビールを買う傾向がある、というものだった。だからアメリカのスーパーではレジ前に缶ビールを置くようになったとかならなかったとか。真偽は不明だが、そういうことだ。
「紙おむつを買う人はベビー用品を買う人」という”常識”とは違う切り口を見つけたわけだ。

とある日本のスーパーで「クリスマス時期のローストチキンの売上が伸び悩んでいる」という悩みがあった。「クリスマスはローストチキン」というのが昔からの日本の常識だった。来店客数は毎年ほとんど変わらないどころか漸増傾向にあるという。お客様は何を買っているのか。レジの売上を徹底的に調べたところ、クリスマス時期だけピザの売上がやや伸びていた。ベーカリーの担当者に訊いてみると「なぜか分からないけどここ数年はクリスマスになると普段よりピザが売れる」のだという。しかし報告するほどのことではなかったので黙ってピザを少しだけたくさん焼くようにしていた。それを聞いた企画担当者は翌年から「クリスマス・ピザ祭り」を企画して大々的に売り出した。すると企画は大成功し、その年のピザの売上は例年の5倍にもなったのだという。その上、ローストチキンまでもが売上を伸ばした。ピザとローストチキンの相関関係までは調べがつかなかったが、恐らくは不景気の影響で家でクリスマスパーティーをやる家庭が多くなったのではないかということだった。

「男女で比べる」「年齢層で比べる」「居住地域で比べる」「職業で比べる」「結婚歴で比べる」などなどデータの切り口は限りなくあるが、一般的な切り口のほとんどは既に網羅されている。だから企画屋は常に新しい切り口を探している。しかしそう簡単に見つかるものではないし考えて思い浮かぶものでもない。たまたまヒョイと思い浮かぶこと(神が降臨するようにw)もあれば偶然遭遇したものがヒントになることもある。

例えば優秀なアスリート達のデータの集めて分析してみたら「字の汚い人ほど全国大会でのメダル獲得率が高かった」という結果が出たとする。例えばの話だw
本当に相関関係はあるのか、統計的に調べてみる。相関関係が”偶然”の範囲を超えて強いと分かったら今度はその原因を探し始める。「競技ばかりに熱中して勉強をしなかった」からなのか「(字を上手く書くような)チマチマしたことにこだわっているようでは一流になれない」のか(例えばの話です)。限りなく可能性を探して因果関係を求めていく。大抵の場合は因果関係までは分からず「相関関係があるんだからそれでいいじゃん」ということになってプロモーションを始めてしまうわけだが。

競技の成績と字が上手いか下手かに相関関係はあるのか。そんな結果を見たらマーケッターは大喜びしてワクワクする。新しい切り口を見つけたかもしれないのだ。ただ、これまた残念なことにその結果だけでプロモーションをやっても、成功する確率はそれほど高いわけではない。