モスバーガーの誤算

マクドナルドを筆頭に一頃は雨後の筍のようにニョキニョキと進出してきたハンバーガーチェーンも、徐々に淘汰、統合されたりなどして数が絞られてきた。ロッテリアやファーストキッチン、ケンタッキーFC、ドムドムバーガー、バーガーキング、カールス・ジュニア、モスバーガー、フレッシュネスバーガー、ベッカーズ、ウェンディーズ、サンテ・オレ、マニアックなところでは沖縄限定のA&W(アンダー)函館限定のラッキーピエロ等があるが、その幾つかは撤退したり再進出、経営統合、規模縮小などして近頃は目にしない店舗もある。

日本ではモスバーガーが売上、店舗数でマクドナルドについで2位につけている。モスバーガーは日本人の経営者が創業したハンバーガーチェーンで、当初は立地は悪いが家賃は安いということで、駅の近くや大通り沿いに店舗は作らなかった。ボクの地元横須賀にも40年以上前にはお店があったが、立地は繁華街から大きくハズレた米軍基地の近くで、今では有名になったドブ板通りからも外れた辺鄙な場所に小汚い店を出して細々と営業していたのを覚えている。当時、大通りには既にマクドナルドが進出して横須賀市民は行列を作っていたが、一方のモスバーガーは知る人も少なくお店は常に閑散としていた。それでも当時から厚切りのトマトやたっぷりのレタス、溢れんばかりの(実際に溢れていたが)オニオントマトソースは中学生にも人気があった。

程なくモスバーガーは全国各地に広がり、繁華街や駅前立地にも出店するようになって大規模ハンバーガーチェーンの仲間入りを果たした。メニューは相変わらず厚切りトマトとたっぷりソースで、マクドナルドなどとは比較にならないほどのボリュームとゴージャス感が魅力だった。この頃から国内にはハンバーガーチェーンが乱立し、モスバーガーも差別化の一環としてライスバーガーなどをラインナップして人気を博したが、次第に日本人のハンバーガー熱も冷めて「結局はハンバーガーなんてジャンクな食べ物」という評価をされるようになって衰退していった。それでも変わらず子供たちからの支持が圧倒的だったのは驚嘆に値する。

数年前にマクドナルドが食品偽装や中国工場での衛生管理不備による不祥事から大きく減収減益となり、国内の店舗も随分と閉店することになった。この時に一気に攻勢に出ようとしたのがモスバーガーだ。原料は全て国内産、野菜も生産者の名前まで表示して「安全・安心」をアピールした。そのためか一時的には売上も若干は伸びたものの現在は伸び悩んでいる。その後のマクドナルドが不祥事以来の減収減益をV字回復を果たしたにも関わらずである。

ハンバーガーは日本人にとって所詮はジャンクフードだ。マクドナルドはアメリカでの創業当時から子供(とその親たち)をターゲットにしてビジネスをしている。
子供や若者はハナから「安全・安心」など求めてはいない。そもそも溢れるほど元気で健康なのだ。親たちも不祥事があれば一時的には拒否反応を示すが、子供の言いなりになってハンバーガーチェーンに連れて行くような大人は基本的に「安全・安心」には無頓着だ。そんなことより子供が喜んで機嫌よくしてくれることのほうが大切なのだ。マクドナルドはその間に子供や若者が喜びそうなメニューを開発しキャンペーンを展開し続けた。
給料も上がらず収入も少ない今の若者も「安全・安心」にお金は払わない。それよりも安くお腹をいっぱいにすることが大切だ。
一方のモスバーガーは魅力的なメニューも開発できずターゲットも絞りきれずにムダな時間を過ごしてしまった。

元来、日本人は忘れっぽい。マクドナルドの不祥事などみんな忘れてしまった。