ランキングの誤解

スポーツの世界ではトップクラスの選手なら全日本ランキングや世界ランキングなどのレベルを持っていることが多い。大きな大会などがテレビ中継されるとチームや個人のランキングが表示されることがある。テニスの錦織圭選手は2014年に世界ランキング5位だったが、当時ランキング1位のジョコビッチとの実力は僅差だった。グランドスラム大会でも1回戦2回戦あたりではランキングが80位以下の選手と対戦することもあったが、その実力差が40倍あったわけではない。そもそも40倍の実力差があったらまともな試合になどなるはずもなく、そんな選手が出場できる大会などない。

以前から、根拠はないが「オリンピックに強い選手」と「オリンピックで勝てない選手」がいるといわれている。古いところではアルペンスキーのインゲマル・ステンマルク選手。ワールドカップで実に通算86勝していたがオリンピックでの金メダルはレークプラシッド大会だけだった。最近ではフィギアスケートの浅田真央選手。名だたる世界大会で優勝を総なめにしてきたのについにオリンピックの金メダルは取れなかった。
ソチ大会の女子ジャンプでは直近の世界選手権で負け無しだった高梨沙羅選手も表彰台に上がることはなかった。ただ今回のオリンピックで銅メダルに輝いたことは素晴らしいことで心から「おめでとうございます」と申し上げたい。そのピョンチャン五輪で高梨選手のライバル、ノルウェーのルンビ選手はここに来て急激に実力を伸ばし、今季のワールドカップで圧倒的な強さを見せつけたまま優勝した。これもまた競技だ。
一方でレスリングの吉田沙保里選手や伊調馨選手のようにランキングも常に上位にいて無敵のまま何度も金メダルに輝く選手もいる。

ランキングは平均点だ。多くの試合で総合的に強ければ上位になり、1つの優勝があっても他がダメなら下位に落ちる。上位の選手は平均的に強くミスが少なく常に安定している。上位に上がれない選手にはムラがあり、安定した強さがないわけだ。だが日本ではオリンピックの一発勝負でメダルを取れば一気に有名になれる。
リオデジャネイロで錦織選手は3位になり銅メダルに輝いた。もちろん錦織選手はそれ以前に十分に有名で強い選手だったが、世界ランキングより遥かに上の成績だ。それをマグレとは思わない。ただ長期間の安定した勝率と短期間の運と勝負強さは必ずしも一致しないのである。
最近の日本選手は大きな大会でも優勝するが世界ランキングでも上位を占める選手が多くなってきたような気がする。安定した強さ、ミスの少なさの上に、ここぞ一発の強さを持っているのだと思う。フィギアスケート男子シングルの羽生結弦選手や宇野昌磨選手などはそのいい例だろう。

いろいろなスポーツの大会で「今度の相手はランキング1位だから勝てるわけないよね」という人もいる。自分が20位でも30位でも、いや100位であっても、その試合に勝てば勝ちなのだ。ランキングはその後から追いかけたって遅くはない。これからもいろいろなスポーツで様々なランキングを見ることがあるだろう。
しかしランキングだけの先入観にとらわれずに、そのスポーツを精一杯プレーし、楽しんで応援することが一番の醍醐味だと思っている。